念持仏

念持仏：個人の信仰を映す心のよりどころ

念持仏（ねんじぶつ）とは、個人が身近に置いて、個人的に礼拝するために作られた仏像のことです。一般的には像高40～50センチ程度の木彫像や金銅像が多く見られます。念持仏は、時代や場所によってさまざまな呼び名で呼ばれてきました。

持仏：最も一般的な呼び名です。
枕本尊：枕元に置かれることから、こう呼ばれます。
内仏：僧侶が個人的に礼拝するものを指します。
陣仏：戦乱の際に、戦陣で守護のために持参された仏像です。
守本尊：旅行中などに携帯されることが多いです。

念持仏の安置方法

小型の念持仏は、厨子（ずし）や龕（がん）と呼ばれる入れ物に安置されることが多いです。しかし、より丁重に扱うために、屋内に持仏間と呼ばれる専用の部屋を設けることもありました。平安時代以降になると、邸内に独立した建物である持仏堂を建て、そこに大型の仏像を安置する例も見られるようになりました。江戸時代以降に普及した仏壇は、この念持仏を安置する習慣が発展したものが原型となっています。

また、山伏が修行の際に笈（おい）に入れる小さな仏像も、念持仏の一種と考えることができます。

著名な念持仏

歴史的に有名な念持仏も数多く存在します。

法隆寺・橘夫人念持仏：橘夫人厨子に安置されている銅製の阿弥陀三尊像で、光明皇后の母である橘夫人の念持仏です。日本最古の念持仏として知られ、国宝に指定されています。
東大寺法華堂・執金剛神像：良弁僧正の念持仏と伝えられています。
金剛峯寺・諸尊仏龕：弘法大師（空海）が唐から持ち帰り、枕本尊としていたものです。こちらも国宝に指定されています。
* 増上寺・黒本尊：徳川家康が守護念持仏としていた阿弥陀如来像です。

これらの著名な念持仏は、歴史的な価値も高く、信仰の対象として大切にされてきました。

念持仏から仏壇へ

現在、各地の寺院で客仏として公開されている小さな木彫仏や金銅像の中には、もともと念持仏として個人的に礼拝されていたものが少なくないと推測されています。念持仏は、個人の信仰生活に寄り添い、心の支えとなる存在でした。その習慣が、仏壇という形に発展し、現代の私たちの生活にも深く根付いているのです。

念持仏は、単なる仏像ではなく、個人の信仰心や歴史、文化が凝縮された貴重な存在と言えるでしょう。

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