仕入

仕入（しいれ）とは

概要

「仕入」とは、企業が事業活動を行う上で、将来顧客に販売することや、製品を製造するための原材料として使用することを目的として、外部の供給者から商品や材料などを購入する行為全般を指します。また、購入に際して支払われた価格そのものも仕入と表現されることがあります。会計の世界では、企業の経営成績を計算するために用いられる主要な費用項目の一つとして認識される勘定科目です。

会計上の取り扱い

簿記や経理実務において、「仕入」は費用グループに属する勘定科目として処理されます。物品を仕入れた取引を会計帳簿に記録する際には、費用の発生を示すルールに従い、通常は仕訳の借方（左側）に「仕入」という勘定科目が記入されます。この仕訳の貸方（右側）には、その購入代金の支払い方法に応じた勘定科目が対応して記録されます。例えば、代金の支払いを後日に行う約束（いわゆる掛け取引）で仕入れた場合には「買掛金」という負債の勘定が、その場で現金で支払った場合には「現金」勘定が使用されます。

企業の一定期間の経営成績を示す損益計算書では、その期間中に仕入れた商品の合計額は「当期商品仕入高」として示されるのが一般的です。しかし、会計期間の末尾に行われる決算整理という作業を経て確定する「仕入」の金額は、単純な当期中の購入額とは異なる意味合いを持ちます。これは、期首に残っていた在庫（前期繰越商品）の価額に当期に仕入れた額を加え、そこから期末に残っている在庫（当期繰越商品）の価額を差し引くという計算が行われるためです。この計算によって、その会計期間に実際に販売された商品の仕入に要した費用（売上原価）が算定されることになり、決算整理後の「仕入」勘定の残高は売上原価を示すことになります。

原価への計上区分

仕入れた物品がその後にどのように使われるかによって、関連付けられる原価の区分が異なります。顧客へそのまま販売することを目的として仕入れた商品は、その価額が「売上原価」の計算に含まれます。一方で、自社で製品を製造するために必要な原材料や部品を仕入れた場合は、その価額は製造にかかった費用である「製造原価」の一部となります。さらに、仕入れた物品を事業所に運び入れるために発生した運送料や保険料などの付随費用も、特に断りがない限り、その物品の仕入価格に含めて計上するのが一般的な会計慣行です。

事業目的による違い

「仕入」として会計処理を行うかどうかは、その物品を購入した企業や個人の事業目的が大きく影響します。例えば、不動産の売買を主な事業とする会社が、販売目的で土地や建物を取得した場合、これは典型的な「仕入」として扱われます。しかし、一般的な企業が自社の事務所として利用する目的で不動産を購入したり、個人が自己居住目的で不動産を購入したりした後に、何らかの理由でそれを転売することになったとしても、その購入代金は当初は「固定資産」などとして計上されており、「仕入」として扱うことはできません。このように、販売や製品製造を事業の目的として購入が行われた場合に限り、「仕入」という勘定が用いられます。

仕入後の資産としての管理

企業が仕入れた商品や材料は、実際に販売されたり製品製造に使用されたりするまでの間、企業の保有する資産とみなされます。会計期間の終わりには、まだ販売や使用が完了していないこれらの在庫物品が評価され、「棚卸資産」として貸借対照表の資産の部に計上されます。そして、決算整理の過程で、企業会計の基本原則である「費用収益対応の原則」に従い、その期間に計上された売上高に対応する形で、仕入れた商品の中から実際に販売された分の原価（売上原価）が計算され、費用として適切に損益計算書に反映されることになります。

関連会計用語

「仕入」の概念をより深く理解するためには、関連するいくつかの会計用語についても把握しておくことが有用です。これには、企業の収益・費用・利益を示す「損益計算書」、日々の仕入取引の詳細を記録する「仕入帳」、掛け取引による仕入によって生じる債務を示す「買掛金」およびその明細を管理する「買掛金元帳」、個々の商品の在庫数量や評価額を管理する「商品有高帳」、決算日時点の在庫価値を示す「棚卸資産」、そして売上高に対応する商品の取得原価である「売上原価」などがあります。これらの用語は、「仕入」という会計処理や概念と密接に関連しています。

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