他阿真円

他阿真円(本名:加藤円住)は、昭和から令和にかけて日本の社会に多大な貢献を果たした稀有な人物です。僧侶として、政治家として、そして教育者として、激動の時代を生き抜き、102歳という生涯を全うしました。

1919年、愛知県岡崎市に生まれた他阿は、幼少期から仏教に深く関わっていました。1932年には出家得度し、その後大正大学専門部を卒業、龍谷大学へ編入しました。しかし、彼の生涯は平和なものではありませんでした。第二次世界大戦中は軍に徴集され、東南アジアへ送られました。マラリアに罹患するなど過酷な体験を経て、捕虜となる苦境も味わっています。戦争の終結後、帰国した彼は肺結核を患いながらも、故郷に戻り誓願寺住職として尽力しました。

信仰生活と並行して、他阿は社会貢献にも積極的に取り組みました。1948年には誓願寺の境内に矢作保育園を設立し、園長として地域の子どもたちの育成に貢献しました。また、政治活動にも進出し、岡崎市議会議員選挙に立候補。7回の挑戦の末、4期当選を果たし、議長も1期務めました。市議会議員としては、市民の生活向上に尽力した一方、岡崎市仏教会会長も務め、宗教界にも貢献しています。

政治家としての活動は1984年に終えましたが、その後も彼は精力的に活動しました。1994年には勲五等双光旭日章を受章し、1997年には足下位に就任。そして2003年には真光寺住職、法主後継者となり、同年7月には時宗の第74世遊行上人に就任しました。宗教界の重鎮として、多くの信徒を導きました。

晩年は、自身の経験を元に執筆活動にも力を注ぎました。著書『捨ててこそ人生は開ける - 「苦」を「快」に変える力』、『生かされて生きる - 「捨ててこそ」の実践』は、多くの人に勇気を与え、大きな反響を呼びました。100歳を超えてもなお、精力的な活動を続け、映画にも出演するなど、その人生は多様な経験と挑戦に満ち溢れていました。2016年には97歳で運転免許を返納したことが話題となるなど、常に時代の流れに敏感で、柔軟な対応を心がけていました。

2021年12月9日、102歳で逝去しました。他阿真円は、戦争体験、政治活動、宗教活動、そして執筆活動など、多様な分野で活躍した稀有な人物でした。彼の生涯は、困難に立ち向かい、常に前向きに生きることの大切さを教えてくれる、貴重なものです。彼の功績は、後世に語り継がれるべきでしょう。

選挙の記録については、具体的な当選回数や得票数などは公開情報を探しても詳細なデータが不足しているため、本稿では割愛させていただきます。また、彼の足跡をより深く理解するためには、彼の著作やインタビュー記事などを参照することをお勧めします。彼の著作は、激動の時代を生きた一人の人間の生き様を克明に描き出し、現代社会を生きる私たちへの示唆に富んでいます。

もう一度検索