付祝言

付祝言について

付祝言（つけしゅうげん）とは、能楽における特定の上演スタイルを指し、時には「附祝言」とも記されます。この形式は、通常の能楽における五番立ちの演能の一環として存在しています。

起源と背景

付祝言は、本来五番目に立てられた能が鬼畜物（祝言性のない曲）だった場合に、最後に祝いの意味を持つ曲を追加上演することから始まりました。この背景には、江戸時代に五番立ちの演能が整備され、より正式な儀式としての側面が強まったことがあります。そのため、この上演形式はしばしば前場を省略した半能の形で行われることが多いのが特徴です。

形式の変遷

時が経つにつれて、付祝言はさまざまな形で進化していきました。五番立ちの演能に限らず、最後の曲が終了した後にシテ（主役）や囃子方（音楽家）が退場した後、地謡（合唱者）が残り、祝言曲のキリ終曲部分を歌うことが通例となりました。この形式は特に明治時代以降に顕著になり、現在では主に付祝言と呼ばれるようになっています。

また、付祝言は追善会などの場面で追悼に適した曲の終曲部分を追加する慣習へと発展しました。このような場面で歌われる曲は「追加」として知られています。

曲の選定

付祝言で選ばれる曲には、『高砂』や『難波』といったリズムの軽快な曲や、『猩々』のような祝言物が適しているとされています。また、その日上演された正規のプログラムの曲は通常選ばれません。これは、演能の締めくくりとしての特別な意味を持ち、観客や演者に対して新たな祝福のメッセージを伝えることを意図しています。

付祝言の具体例

付祝言にはいくつかの著名な曲があります。例えば、『高砂』では「千秋楽は民を撫で、万歳楽には命を延ぶ」といったフレーズがあり、演劇公演の最終日を「千秋楽」と呼ぶ由来とも言われています。『難波』では「この音楽に引かれつつ、聖人御代にまた出で」と詠まれ、万歳楽を祝う意義を語っています。

その他にも、『猩々』の「尽きせぬ宿こそめでたけれ」や、『靱猿』の「なほ千秋や万歳と」が多くの人々に親しまれています。軟派な演目の際には、そのスタイルにあった狂言の付祝言が行われることもあります。

まとめ

付祝言は、能楽の伝統を深く根付かせ、そのストーリーや演出に華を添える重要な役割を果たしています。これにより、観客は単なるエンターテイメントを超えた、心のこもった祝福を体験することができるのです。

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