キリ

キリ（桐）

キリ（学名: Paulownia tomentosa）は、シソ目のキリ科に属する落葉広葉樹です。日本では、キリノキと呼ばれることもあり、初夏には特有の淡紫色の花が咲くことで広く知られています。この木はその経済的価値から、特用樹種として林業において重宝されていますが、一方でアメリカの国立公園では外来種として問題視され、駆除対象となっています。

名前の由来

キリという名前の由来にはいくつかの説がありますが、一説には木材を得るための栽培技法である「台切り」に由来しているとされています。この技法では、根元で幹を切り、再び成長させることで良質な材を育てます。また、英語の「princess tree」は、属名のPaulowniaがロシア大公女アンナ・パヴロヴナに由来することから名付けられています。

近縁の植物

キリという名前が付けられた他の植物は、実際には遠縁の異なる種であり、キリ科の近縁種は9種程度しか存在しません。アオギリなども異なる科に属し、中国では古くから両者が「桐」という文字で呼ばれていたために混乱が生じています。現在の中国では、キリは「泡桐」、アオギリは「梧桐」と呼ばれています。

分布

キリは中国の揚子江流域や韓国の鬱陵島、日本では大分・宮崎県境の山岳地帯に自生していますが、その原産地は不明とされています。日本にはかつて自生していなかったとされており、現在見られるものは全て栽培された個体です。特に東北地方や関東北部、新潟県での栽培が一般的で、福島県の会津桐や青森県・岩手県の南部桐が名高いです。

形態・生態

キリは高木に成長し、通常10 - 15mの高さ、幹の直径は50cm程度になります。樹皮は灰白色または灰褐色で、波状に浅く裂けます。若木の葉は特に大きくなり、全縁または浅く3裂の形状を持つ広卵形です。花は5 - 6月に咲き、円錐花序に淡紫色の花をつけます。果実は夏から冬にかけて成熟し、風で撒布される小さな翼のある種子を持っています。キリは日陰を嫌い、日当たりの良い場所で成長します。

木材の特性

キリは非常に軽い木材として知られており、その比重は0.27から0.30です。材質は独特で湿気を通さず、狂いや割れが少ないため、高級家具や楽器、伝統的な桐箪笥に利用されています。特に桐箪笥は、日本において婚礼の際に作られることが多く、娘が生まれるとキリを植え、結婚時に伐採して箪笥を作るという文化があります。キリ材は加工も容易で、見た目の美しさも評価されています。

人間との関わり

キリは古くから下駄や箪笥、楽器に使用されてきました。また、神聖な木とされ、多くの家紋や紋章に取り入れられています。キリの花言葉は「高尚」であり、文化的にも深い意味を持っています。

まとめ

キリはその美しさと独自の性質から、日本の文化や経済において大きな役割を果たしてきました。特に木材としての利点は多岐にわたり、その他の用途においても利用されています。今後もその価値は変わらず、多くの人に愛され続けるでしょう。

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