仙台糒

仙台糒の歴史と特徴

仙台糒（せんだいほしいい）は、日本の江戸時代に仙台藩で製造された保存食品で、特に地域の特産品としての地位を確立していました。この糒は、兵糧としての位置づけを持ち、長期間の保存に適していたため、当時の人々にとって欠かせない食材の一つでした。仙台糒の製造は、江戸時代初期の慶長年間（1598年 - 1615年）にさかのぼります。当時の仙台藩初代藩主である伊達政宗が、上方の技術を参考にし、道明寺糒を基にして作らせたことがその始まりです。

製造の過程と製造者

仙台糒の製造は、立町、国分町、木町、新伝馬町、そして近郊の小田原村といった5か所で行われていました。それぞれの地域には、特定の製造者が存在し、例えば立町の夏井藤兵衛、国分町の白河才兵衛、木町の酒井五郎右衛門、新伝馬町の伊藤虎之助、そして小田原村の松原庄右衛門などがその重要な役割を果たしていました。これらの製造者は、仙台糒の品質を向上させるため、長年にわたり技術を磨いてきました。仙台糒はその上質さから、伊達家が幕府や朝廷に献上する食材としても知られていました。

仙台糒の文化的な位置づけ

仙台糒は、食材としての役割を超え、地域の食文化に深く根付いていました。地域の人々は、仙台糒を道明寺糒と呼び、特に区別することなく使用していたようです。たとえば、大正時代のある頃、立町1丁目の夏井源兵衛の店舗には「道明寺御糒製造所」との看板が掲げられ、仙台糒の名称は前面には出していませんでした。これは、仙台糒がいかに広く受け入れられていたかを示す一例です。

消失と新たな展開

しかし、時代が進むと、仙台糒に対する需要は減少し、特に廃藩置県以後は、軍糧としての役割を失いました。最後まで残っていたのは夏井家だけで、その後も糒の製造が続けられたものの、最終的には途切れてしまったのです。しかし、仙台の食文化には根強い影響を残しました。たとえば、仙台駄菓子には、糒に黒砂糖や飴を混ぜて形成した『干切』という菓子が今でも作られています。このように仙台糒は消失したものの、その結果生まれた菓子は現代にも受け継がれています。

参考文献

• - 里見藤右衛門『封内土産考』、仙台叢書第3巻、1923年収録。
• - 鈴木省三『続仙台風俗志』、1940年及び『仙台風俗志（全）』、歴史図書社、1977年収録。
• - 仙台市史編纂委員会『仙台市史』第1巻、1954年。
• - 山田揆一『仙台物産沿革』、仙台叢書別集第2巻、1925年収録。

もう一度検索