仙台市史

仙台市史：明治から平成、4つの時代を彩る仙台の歴史

仙台市史は、1889年（明治22年）の市制施行以来、仙台市の歴史を記録した自治体史です。単なる行政記録ではなく、地理や歴史に関する詳細な記述を含む、いわば仙台市の百科事典と言えるでしょう。興味深いことに、発行主体、題名ともに同じ「仙台市史」でありながら、時代ごとに全く異なる内容で4回も刊行されています。それぞれ明治、大正、昭和、平成と元号に合わせたように発行されたことから、この元号で区別されることも少なくありません。

明治の『仙臺市史』(1908年)

最初の仙台市史は、日露戦争の戦後復興支援を目的とした官民団体「仙台兵事義会」の発起によって編纂されました。兵事義会の功績と仙台市の発展を記録する目的で、仙台市役所も協力し、編纂事業が開始されました。この事業は、兵事義会の活動報告も兼ねており、その内容の多くを占めていることが特徴です。藤原相之助を主任として編纂されたこの市史は、全1巻ながら1700ページにも及ぶ大部の書物で、当時の価格は4円50銭でした。

大正の『仙臺市史』(1929年)

大正時代の仙台市史は、市会議員で郷土史家でもあった菊田定郷の提唱により編纂されました。菊田を中心とした編纂委員会は、人物伝に重点を置いた内容をまとめ、昭和4年に第1巻を刊行。しかし、人物伝が全体の84%を占めるなど、施政に役立つ情報が不足していることを山口竜之助市長が問題視したことから、1巻のみで編纂は中止されました。菊田はその後、自身の研究成果をまとめた『仙台人名大辞書』を刊行しています。

昭和の『仙臺市史』(1950-1956年、1969年)

昭和の仙台市史は、太平洋戦争中の空襲で一度は編纂計画が中断するも、戦後の1946年に阿刀田令造と三原良吉の進言により再開されました。阿刀田は急逝しましたが、古田良一が委員長を引き継ぎ、仙台の都市史に焦点を絞った全10巻の大規模な市史が編纂されました。仙台開府以前の歴史は扱わず、仙台市域の範囲に限定して編纂されたことが特徴です。これは、同時期に編纂が進められていた『宮城県史』との役割分担によるものでしょう。本編は専門の編纂員が担当した一方、別編は仙台郷土研究会の研究者らが担当、民俗や方言など、当時の新しい学問分野も取り入れられています。1950年から1956年にかけて刊行されましたが、限定500部と小部数であったため一般にはあまり知られていませんでした。1969年には、続編として戦後の歴史をまとめた第11、12巻が刊行され、全12巻となりました。

昭和の『目で見る仙台の歴史』(1959年)

昭和31年の『仙台市史』完成を機に、図録の必要性が指摘され、『目で見る仙台の歴史』が刊行されました。市史編纂委員を中心に編纂されたこの図録は、多数の写真や図版を収録し、仙台の歴史を視覚的に伝えることを目指したものです。

平成の『仙台市史』(1994-2015年)

平成の仙台市史は、市制施行100周年記念事業として編纂されました。泉市、宮城町、秋保町の合併により市域が拡大したことを受け、先史時代から現代までの仙台の歴史を網羅した全32巻の大規模な市史となりました。前回の市史とは異なり、多くの研究者による綿密な分担作業により、統一感のある通史となっています。また、伊達政宗関連文書を4冊収録するなど、資料編も大幅に拡充されています。旧石器捏造事件の影響で一部の記述が修正された箇所もありますが、仙台の歴史を深く理解する上で貴重な資料となっています。

各時代の『仙台の歴史』

昭和と平成の『仙台市史』は巻数が多いため、概要をまとめた『仙台の歴史』という書籍も発行されました。こちらも、時代ごとに異なる内容で3回刊行されています。

まとめ

明治から平成にかけて編纂された4つの『仙台市史』は、それぞれの時代の学問的潮流や社会情勢を反映し、仙台の歴史を多角的に捉え直す試みと言えるでしょう。これらの市史は、単なる歴史書としてだけでなく、仙台市の発展と人々の生活を知るための貴重な資料となっています。多様な視点と豊富な情報から成るこれらの市史は、現代の研究者や市民にとって、仙台の過去、現在、そして未来を考える上で欠かせない存在となっています。

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