仙台藩の家格

仙台藩の家格制度

仙台藩では、藩主と家臣の関係を明確にするため、独特な家格制度が設けられていました。この制度は、家臣の序列を定め、藩内での地位や役割を規定するもので、単なる身分制度を超えた複雑な構造を持っていました。家格は、上から一門、一家、準一家、一族、宿老、着座、太刀上、召出、平士（番士）、組士と定められ、さらに平士以下は家格を持たないとされました。これらの家格は、家臣の出自や功績、藩主との関係性などを基に決定され、家臣の生活や藩政への関与に大きな影響を与えました。

家格の成立

仙台藩の家格制度は、藩主との血縁関係を模倣した形で構築されました。この制度は、家臣団の秩序を維持し、藩の統治を円滑に進めるためのものでした。最も古い家格である一家、一族は室町時代にまで遡るとされ、伊達氏の家臣団形成の過程で誕生しました。一門は、伊達政宗の時代に設けられ、戦国時代に伊達氏に服属した小大名や分家がこれに属しました。準一家は、他の戦国大名の重臣クラスが取り込まれたもので、これら上位の家格は、藩政初期にその基礎が築かれました。

1630年代までは、宿老より下の家格は明確に区分されておらず、一括りにされていました。しかし、1640年代に入ると、着座以下の家格が細分化され、準一家も正式な家格として認められるようになりました。さらに、正月の儀式での藩主への挨拶の順序によって、着座以下の家格に一番座、二番座の区別が設けられ、家格内の序列がより明確になりました。家格は、原則として代々受け継がれるものでしたが、家臣の功績や不行跡によって昇格や降格があり、常に変化するものでした。

家格の意義

家格は、単なる序列を示すだけでなく、家臣の席次や役職任命にも影響を与える重要な要素でした。家臣の忠誠の対象は藩主であり、家格の高下によって家臣間の命令系統が決定されるわけではありませんでしたが、席次や儀礼的な場面では家格が非常に重視されました。特に、役列は家格と役職を組み合わせて席次を決める制度で、家格が高いほど席次も上位になりました。また、家格は藩政における役職任命の基準としても用いられ、一門や準一家は要職から遠ざけられ、一家、一族、着座の家臣が藩政の中枢を担いました。

しかし、家格だけが役職任命のすべてではなく、知行高も重要な基準でした。低い家格の家臣が抜擢され、それに応じて家格が引き上げられることもあり、家格は流動的な側面も持っていました。知行高や拝領屋敷の形態と家格との間には、厳密な対応関係はありませんでした。家格の高い家臣は知行高も高い傾向にありましたが、例外も存在しました。

個々の家格

一門

一門は、伊達政宗によって創設された家格で、石川氏が筆頭とされました。戦国時代の小大名が伊達氏に服属した家や伊達氏の分家がこれに属しました。一門は、藩主にとって客人とも家臣ともつかない存在で、儀礼的な役割を担い、藩政に直接関与することは少なかったものの、発言力は大きく、藩政や人事に影響力を持っていました。

一家・準一家・一族・宿老

一家は、伊達氏の古くからの家臣や分家で、戦国時代の在地領主が含まれていました。一家は、藩政の初期には重職を担う者もいましたが、藩政を担うのは一家より下の家格が中心でした。準一家は、他の戦国大名の分家や有力家臣で、政宗の時代に伊達氏に仕えました。準一家は、初期には藩政の中枢から遠ざけられていましたが、後に藩政に関わるようになりました。一族は、古くからの家臣で、一家に次ぐ家格でした。

宿老は、もともと家老のことでしたが、仙台藩では奉行が藩政を統べるようになったため、文書に署名するだけの役職となり、家格化しました。

着座・太刀上・召出

着座、太刀上、召出は、正月の儀式での待遇によって細かく分けられた家格です。それぞれ、元日の儀式に出る一番座と二日の儀式に出る二番座に分けられ、一番座の方が上位でした。着座は、奉行職に就いた家臣に与えられた家格とされますが、実際の適用例は少数でした。

平士・組士

平士は、直属家臣の中で最も多く、番を組んで勤務したため、番士とも呼ばれました。召出も番士に含まれ、番士の中でも上位に位置しました。最下層の士である組士は、職務や由緒によって様々な組に分けられました。

その他

藩政中期以降、多額献金によって百姓や町人を武士身分に取り立てる制度が設けられ、彼らは組士や番士とされました。藩主直属の家臣の中には、組士よりも下の身分である小人や足軽もいました。陪臣は、藩主から見て家臣の家臣で、伊達家の家格の統制範囲外でした。

明治時代の家格

戊辰戦争後、仙台藩は減封となり、家格制度はその意義を失っていきました。版籍奉還後、仙台藩は士族を三等級に分けましたが、中央政府から咎められ、この制度はすぐに廃止されました。

仙台藩の家格制度は、複雑で独特なものでしたが、藩の秩序を維持し、社会の安定に貢献しました。この制度を理解することで、仙台藩の歴史や社会構造をより深く理解することができるでしょう。

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