陪臣

陪臣とは

陪臣（ばいしん）とは、主君に直接仕える家臣（直臣）のさらに下の家臣を指す言葉です。また者、また家来とも呼ばれます。直臣と比較して、陪臣は主君との直接的な主従関係を持たない点が大きな特徴です。封建制度において、この区別は非常に重要で、陪臣は直臣に比べて家格が低いとされていました。

直臣と陪臣の違い

直臣は主君と直接主従関係を結び、主君の命令に直接従います。一方、陪臣は直臣を通じて主君に仕え、原則として主君から直接の指揮命令を受けることはありませんでした。このため、陪臣は「臣下の臣下は臣下ではない」とされ、主君の主君に従う義務もありませんでした。

歴史的背景

陪臣という概念は、元来日本の武家社会で用いられていましたが、他国の封建制度における同様の身分に対しても用いられることがあります。中世ヨーロッパでも、直臣と陪臣の区別は重要であり、家臣の家臣という意味で陪臣という言葉が使われました。

江戸時代の陪臣

江戸時代の幕府や各藩の官僚機構は、主従関係のネットワークによって構成されていました。将軍や藩主が直接命令できるのは直臣だけであり、その家臣が抱える武士は陪臣と呼ばれました。

定義

江戸時代における陪臣の関係性を整理すると以下のようになります。

将軍
直臣（大名、旗本など）
陪臣（藩士など）
陪々臣（藩士の家臣）
陪々々臣（陪々臣の家臣）

このうち、陪臣は直臣である大名や旗本が召し抱えた家臣を指します。陪臣は、たとえ大藩の重臣であっても将軍に直接謁見することは許されませんでした。また、陪臣が他家の主君に直接面会することも原則としてできませんでした。

陪臣叙爵

例外的に、御三家や加賀前田家の家老は陪臣でありながら、諸大夫に叙爵されることがありました。これは「陪臣叙爵」と呼ばれ、家格によって定員が決まっていました。

陪々臣

大藩では、陪臣である上級家臣がさらに家臣を抱えていることが多く、彼らは陪々臣と呼ばれました。陪々臣は格式は低いものの、主家が高禄を得ている場合、微禄の直参よりも高い禄高を得ていることもありました。

各藩の例

加賀[[藩]]: 100万石を領する加賀[[藩]]では、加賀八家などの重臣が多くの家臣団を抱え、中には半大名のような状態の家もありました。
仙台[[藩]]: 地方知行制が残り、半大名的な家臣が多く、陪臣がさらに家臣を抱えることも珍しくありませんでした。伊達一門の家老などが有名です。
紀州[[藩]]: 江戸勤番の藩士に家来が同行することがあり、彼らが侍身分であれば陪々臣となります。
薩摩[[藩]]: 上士層は家中と呼ばれる陪々臣を抱えていました。
長州藩: 一門六家や永代家老などの重臣が多くの陪々臣を抱え、家臣団を組織していました。

陪々々臣

陪々臣の下には、さらに陪々々臣が存在することもありました。しかし、陪々々臣は奉公関係が複雑になるため、士分として扱われるのは陪々臣までとされていました。

天下の三陪臣

『名将言行録』には、戦国時代の「天下の三陪臣」として、直江兼続、小早川隆景、堀直政（または鍋島直茂）が挙げられています。彼らは陪臣でありながら、天下の政治を担うほどの能力を持っていたと評価されました。

まとめ

陪臣は、江戸時代の武家社会において、複雑な主従関係を形成する上で重要な役割を果たしました。彼らは直臣とは異なる立場にありながら、それぞれの藩や組織の中で重要な役割を担っていました。陪臣の存在は、当時の社会構造を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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