令和3年足利市山林火災

令和3年足利市山林火災の概要

2021年2月21日午後3時30分頃、栃木県足利市西宮町の両崖山、天狗山で山林火災が発生しました。乾燥した空気と強風の影響で火は瞬く間に広がり、167ヘクタールもの山林を焼失する大規模な火災となりました。

火災発生時、現場付近は湿度が12%と非常に乾燥しており、さらに北からの季節風「赤城おろし」が吹いていたため、火の勢いは増しました。23日には近隣の佐野市で最大瞬間風速17メートルを観測するなど、強風が消火活動を困難にしました。

足利市は火災発生後、市内の207世帯に避難勧告を出しました。避難が困難な世帯には職員が個別訪問し、健康状態の確認やマスク、のど飴の配布を行いました。約1ヶ月後の3月30日、足利市は出火原因を「たばこ」と推定。現場付近から複数の吸い殻が発見されたことが理由です。

消火活動

地上では、足利市消防本部、足利市消防団をはじめ、近隣の佐野市、桐生市、館林地区、太田市、宇都宮市の消防本部、東京消防庁などが消火活動にあたりました。総勢100名を超える消防隊員が活動しました。

上空からは、自衛隊や栃木県消防防災航空隊のヘリコプターに加え、緊急消防援助隊として宮城県、埼玉県、茨城県、山梨県、富山県、東京消防庁、横浜市の消防防災ヘリが消火活動に協力しました。しかし、強風の影響でヘリコプターでの消火活動が中断される場面もありました。

火災の経過

2月21日：午後3時30分頃、出火。
2月22日：栃木県知事が自衛隊に災害派遣を要請。
2月23日：西宮町、本城1丁目の3地区に避難勧告。
2月24日：延焼面積は約50ヘクタールに拡大。本城1丁目の一部、五十部町、大岩町の一部に避難勧告。市内の複数の学校が休校や下校時間の繰り上げ措置。
2月25日：政府が首相官邸危機管理センターに情報連絡室を設置。栃木県が災害救助法の適用を決定。延焼面積は約100ヘクタールに拡大。
2月27日：延焼面積は約106ヘクタール。
3月1日：足利市が鎮圧を発表、避難勧告を解除。北関東自動車道の通行止めも解除。
3月15日：足利市が鎮火を確認したと発表。

支援の動き

足利市が開設した避難所には、市内外から多くの物資が寄付されました。産業廃棄物処理業者からはマスク1万枚が寄付され、ふるさと納税を通じて1千万円を超える寄付金が寄せられました。ボランティアの申し出も多数ありましたが、足利市はボランティアの募集は行いませんでした。

3月21日には、火災からの復興を応援するチャリティーイベント「足利応援マルシェin栃木」が開催されました。

規制強化

この火災を教訓として、足利市は「美しい山林を火災から守る条例」を制定、施行しました。この条例では、市内全域の山林において、喫煙（加熱式たばこ、電子たばこを含む）、たき火、煙火（のろし、花火など）、裸火（ライター、ストーブ、コンロなど炎が露出するもの）が禁止されました。この条例はモラル向上を目的とするもので、罰則は設けられていません。

また、消火活動中に何者かがドローンを飛行させたため、ヘリコプターによる消火活動が中断しました。この事態を受け、国土交通省航空局は「緊急用務空域」を指定できるように航空法施行規則を改正しました。

その他の影響

足利市では2014年にも大規模な山林火災が発生しており、過去にも同様の被害を経験しています。また、2021年4月22日には、足利市に隣接する群馬県みどり市でも山火事が発生しています。

出火場所から約800メートル離れた大岩山毘沙門天では、火災の被害を避けるために文化財約150点を運び出しましたが、その後の作業や経年劣化により、県指定文化財である本尊・毘沙門天像を含む10点の文化財に損傷が見つかりました。

関連情報

災害救助法
火災の年表
山火事
両毛
* 緊急用務空域

この火災は、乾燥した気象条件と強風が重なった際に、山火事が大規模化する危険性を示す事例となりました。また、山林火災を防ぐための意識啓発や、緊急時の対応策の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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