仲尾宏

仲尾 宏

仲尾 宏（なかお ひろし）氏は、日本の歴史学者であり、特に前近代の日朝関係史研究において多大な功績を残しました。1936年8月27日に京都府京都市で生まれ、2023年1月1日に86歳で逝去するまで、研究者として、また社会活動家として精力的に活動しました。

氏は1960年に同志社大学法学部政治学科を卒業後、京都芸術短期大学や京都造形芸術大学で教鞭を執り、2007年からは京都造形芸術大学客員教授を務めました。専門は前近代の日朝関係史であり、特に江戸時代に朝鮮から日本へ派遣された外交使節である「朝鮮通信使」に関する研究は、その中心的なテーマの一つでした。朝鮮通信使が日朝間の文化交流や平和的な外交に果たした役割を詳細に分析し、その歴史的意義を広く知らしめました。氏の研究は、これまでの「鎖国」史観を見直し、前近代における日本と東アジア諸国との活発な交流の実態を明らかにするものでした。

学術研究に加え、仲尾氏は社会における人権問題、特に在日コリアンの人権問題にも深く関わりました。一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター（KMJ）の理事長や、財団法人世界人権問題研究センターの理事を務め、研究者の立場から社会的な課題解決に向けた提言や活動を行いました。龍谷大学安重根東洋平和研究センター客員研究員としても、東アジアの平和構築に関わる歴史研究に貢献しました。

その長年の研究活動と功績に対しては、高く評価されました。2002年には京都市国際交流賞を受賞し、国際交流への貢献が認められました。また、2007年には京都新聞学術文化大賞を受賞するなど、学術分野での優れた業績が称えられました。

仲尾氏の主要な研究成果は、多くの著書として公刊されています。代表的な著作には、『前近代の日本と朝鮮 朝鮮通信使の軌跡』、『朝鮮通信使をよみなおす 「鎖国」史観を越えて』、『朝鮮通信使 江戸日本の誠信外交』などがあり、これらの著作を通じて、前近代日朝関係史研究の発展に大きく貢献しました。また、『大系朝鮮通信使』全8巻の責任編集など、共編著も多数手がけ、関連分野の研究者との共同作業を通じて研究成果の共有と普及に努めました。

2023年1月1日、仲尾宏氏は脳梗塞のため86歳でその生涯を閉じました。氏は、前近代日朝関係史、特に朝鮮通信使研究の分野で日本の歴史学界に重要な足跡を残すとともに、在日コリアンの人権問題をはじめとする社会的な課題にも真摯に取り組み続けました。その研究と活動は、今後の日朝関係史研究や人権問題への取り組みにおいても、重要な指針となるでしょう。

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