任天堂・電通ゲームセミナー

任天堂・電通ゲームセミナーとは

任天堂・電通ゲームセミナーは、1990年から1992年の3年間、任天堂と電通が共同で主催した、学生向けのコンピュータゲーム開発セミナーです。

1980年代のゲームブームを背景に、ゲームクリエイターが憧れの職業として注目されるようになり、1990年代に入るとゲーム会社各社が人材育成に力を入れ始めました。そのような状況下で、任天堂は当時関係の深かった電通と連携し、約1年間にわたる本格的なゲーム制作セミナーを実施しました。

セミナーの概要

セミナーは、1年目と2年目は任天堂東京支店（神田）で、3年目は東京に加え任天堂大阪支店でも開催されました。受講希望者は、まず電通本社で行われる1日間の入門セミナーに参加し、その後、小論文と面接による選考を経て、20人から40人程度が選抜されます。選ばれた受講生は、5月から約10ヶ月間のアドバンスセミナーに参加します。

セミナーの前半では、任天堂の開発スタッフが講師となり、プログラミング、デザイン、サウンドなど、ゲーム制作に必要な知識や技術を学びます。後半では、受講生自身が実際にゲーム制作に取り組みます。受講料は無料で、開発に必要なパソコンやテレビなどの機材は貸与されました。

セミナーの成果をさらに発展させるため、1年目のセミナー終了後には、任天堂と電通の共同出資により株式会社マリオが設立されました。同社は、翌年から追加された上級者向けのマスターセミナーの運営や、セミナーで制作された作品の管理・商品化などを担当しました。

セミナーは3期で終了しましたが、2003年からは、任天堂が単独で学生を対象とした「任天堂ゲームセミナー」を開催しています。

製品化された開発作品

セミナーで制作された作品の中には、商品化されたものもあります。以下はその代表的な例です。

ジョイメカファイト
1993年5月21日にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されました。
セミナーでの開発中のタイトルは『バトルバトルリーグ』でした。
ディレクターを務めた林田宏一氏は、後に任天堂に入社しています。
一時期、権利関係が不明確になり、他機種への移植が困難な状況が続いていました。

すってはっくん
1997年よりスーパーファミコンの周辺機器であるサテラビュー向けに配信されました。
当初は3期生によってファミリーコンピュータ ディスクシステム用ソフトとして開発され、セミナー後には、受講生の鈴井匡伸氏らが設立したインディーズゼロが開発を引き継ぎました。

主なセミナー出身者

セミナーからは、ゲーム業界やその他分野で活躍する多くの人材が輩出されています。以下に主な出身者を挙げます。

江渡浩一郎：1期生。メディアアーティスト、情報理工学者。
野上恒：1期生。ゲームクリエイター。任天堂入社。
飯田和敏：2期生。ゲームクリエイター。
今井トゥーンズ：2期生。イラストレーター。
林田宏一：ゲームクリエイター。任天堂入社。
鈴井匡伸：3期生。インディーズゼロ設立。

まとめ

任天堂・電通ゲームセミナーは、ゲーム業界の発展に大きく貢献した人材育成の場でした。このセミナーから生まれた才能は、後のゲーム業界を牽引し、現在もその影響は続いています。

もう一度検索