任武

任武（じん ぶ、Ren Wu）は、清朝末期の陝西省で発生した回民蜂起を率いた指導者の一人です。別名として任五または任老五とも呼ばれています。生年は不詳ですが、1863年に戦死しました。

彼は陝西省出身で、イスラム教の指導者であるアホンでした。1857年から1858年にかけて、雲南省で発生した回民の蜂起に参加し、軍事的な経験を積みました。その後、故郷である陝西省に戻り、反清運動の準備を進めました。

1862年、太平天国の陳得才率いる部隊が陝西省に侵入すると、任武は赫明堂らと共に蜂起しました。彼らは清朝の団練大臣である張芾を戦死させ、華州や華陰といった重要な拠点を占領しました。勢いに乗った蜂起軍は、ついに西安を包囲するまでに至りました。この事態に、清朝は欽差大臣として勝保を派遣しましたが、蜂起軍はしばしば勝保の軍を打ち破りました。

しかし、清朝は欽差大臣をドロンガ（多隆阿）に交代させると、戦況は一変します。ドロンガ率いる清朝軍は、同州で蜂起軍を破り、蜂起軍は撤退を余儀なくされました。その後、回民軍は根拠地としていた羌白鎮、王閣村、倉頭鎮を次々と失い、劣勢に立たされました。最終的に、任武は戦死し、彼の蜂起は終焉を迎えました。

ただし、一説には、任武は甘粛省の董志塬に逃れ、抵抗を続けたとも伝えられています。

任武の蜂起は、清朝の支配に対する回民の不満が爆発した結果であり、その後の清朝末期の動乱に大きな影響を与えました。彼の行動は、回民の反乱における重要な一局面を示すものであり、歴史研究において注目されています。

参考文献
郭穀生・史式編『太平天国大辞典』中国社会科学出版社
『中国歴史大辞典・清史（下）』上海辞書出版社

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