赫明堂

赫明堂（かく めいどう、He Mingtang）は、19世紀後半の清朝末期に、陝西省で発生した回民蜂起の指導者として知られています。彼の生涯は、清朝の支配に対する回民（イスラム教徒）の抵抗運動と深く結びついています。

出自は陝西省とされています。彼はイスラム教の指導者であるアホンとして、地域社会で一定の影響力を持っていました。1850年代後半には、雲南省で勃発した回民蜂起に参加し、その軍事的な経験を積みました。この蜂起は、清朝の民族差別的な政策に対する不満が爆発したもので、彼もその中で活動していました。

雲南での蜂起が終わると、赫明堂は故郷である陝西省に戻り、反清運動の準備を始めました。当時、清朝は太平天国の乱という内乱にも苦しんでおり、地方では官吏の腐敗や重税が横行し、民衆の不満が高まっていました。1862年、太平天国の将軍である陳得才の部隊が陝西省に入ると、赫明堂は任武らと共に、ついに蜂起を決行します。彼らの軍勢は、渭水の両岸を転戦し、清軍に対して激しい戦いを繰り広げました。

しかし、1864年までに、陝西省での蜂起は清軍によって鎮圧されてしまいました。赫明堂は一時、甘陝提督の雷正綰に投降しますが、清朝の支配に対する抵抗の意志は衰えていませんでした。1866年、赫明堂は再び蜂起し、甘粛省寧州の董志塬において、回民軍の連合体である「十八大営」の元帥の一人に選出されました。

この頃、甘粛省では、同じく回民の指導者である馬占鰲が勢力を拡大していました。赫明堂は馬占鰲と協力し、清軍に対抗しました。両軍の連合は、清朝にとって大きな脅威となりました。しかし、1872年、馬占鰲は清朝に寝返る決断を下します。彼は清朝から官位を与えられ、回民の反乱を鎮圧する側に回ったのです。赫明堂は、馬占鰲の投降に強く反対しましたが、その結果、馬占鰲によって捕らえられ、清軍に引き渡されてしまいました。最終的に赫明堂は処刑され、その波乱に満ちた生涯を終えました。

赫明堂の生涯は、清朝末期の民族対立と社会不安を象徴するものです。彼の反清運動は、多くの回民の共感を呼びましたが、最終的には清朝の軍事力と内部の裏切りによって鎮圧されてしまいました。彼の抵抗は、後世に回民の反乱の歴史として語り継がれています。

参考文献

• - 郭穀生・史式編『太平天国大辞典』中国社会科学出版社
• - 『中国歴史大辞典・清史（下）』上海辞書出版社

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