伊予絣

伊予絣（いよかすり）は、愛媛県松山市で製造されている、藍染めの模様が美しい木綿の織物です。別名、松山絣とも呼ばれ、久留米絣、備後絣と並び、日本三大絣の一つとして数えられています。

その起源は江戸時代の後期、今出（現在の松山市西垣生町付近）に住んでいた鍵谷カナという女性が、独力で織り出したことに始まります。当時、農家の女性たちは、農作業の合間を利用して糸を紡ぎ、それを織って伊予絣を織ることで、家計の足しにしていました。

明治時代に入ると、織機の改良が進み、生産量も飛躍的に増加しました。伊予絣はその美しさと丈夫さから全国的な人気を博し、明治の中頃から大正時代にかけては、日本の絣生産のおおよそ半分を占めるまでになりました。1904年（明治37年）には、年間200万反以上という驚異的な生産量を記録し、日本一の絣の産地となりました。

しかし、時代の流れとともに、人々の生活様式が洋風化し、着物需要が減少すると、伊予絣の需要も低迷していきました。現在では、事業として伊予絣の製造を続けているのは、松山市内の1軒のみとなってしまいました（他の事業との兼業）。

その唯一の製造元である会社が運営する伊予かすり会館では、機織りの実演を見学することができます（入場料50円）。また、絣製品を購入することも可能です。今出地区には、伊予絣の創始者である鍵谷カナの功績を讃えるため、木子七郎が設計した頌功堂があり、国の登録有形文化財となっています。

1980年（昭和55年）には、愛媛県指定の伝統的特産品に指定され、その価値が見直されています。伊予絣は、その美しい藍色の模様と、素朴な風合いで、今も多くの人々を魅了し続けています。その歴史と伝統を守り、未来へと繋げていくために、関係者の努力が続けられています。

関連施設
* 民芸伊予かすり会館

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