久留米絣

久留米絣：福岡県久留米市が誇る伝統の織物

久留米絣は、福岡県久留米市およびその周辺の旧久留米藩地域で製造されている、歴史と伝統のある綿織物です。主な特徴は、藍染めを主体とし、あらかじめ藍と白に染め分けた糸（絣糸）を用いて織り上げられる、独特の絣模様にあります。その美しさと技術は高く評価され、伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つとして数えられています。

久留米絣の歴史

久留米絣の起源は、江戸時代の後期に遡ります。当時12歳だった井上伝という少女が、偶然からその技法を発見したと伝えられています。伝は、着古した着物の模様が美しく残っていることに気づき、それをヒントに、糸を括って染めることで模様を織り出す絣の技法を考案しました。この技法は瞬く間に地域に広がり、久留米藩も産業として奨励したため、久留米絣は地域を代表する特産品として発展しました。

最盛期には、年間200〜300万反もの久留米絣が生産されました。しかし、戦後になると洋装化が進み、絣の需要は激減。現在では生産量は大きく減少していますが、その伝統と技術は今も大切に受け継がれています。

重要無形文化財、伝統工芸品としての指定

久留米絣の技術は、1956年に重要無形文化財に指定され、その価値が公に認められました。さらに1976年には、通商産業大臣（現在の経済産業大臣）によって伝統工芸品にも指定されています。これらの指定は、久留米絣の技術と伝統を保護し、後世に伝えるための重要な取り組みとなっています。

現代における久留米絣

現在、久留米絣の生産量はかつてに比べて少なくなっていますが、その美しさと品質は依然として高く評価されています。近年では、伝統的な技法を守りながらも、現代のニーズに合わせた新しい商品開発も積極的に行われています。久留米絣を用いたスニーカーやカバンなど、斬新なアイデアを取り入れた製品も登場し、新たなファンを獲得しています。

久留米絣と文化

久留米絣は、地域の文化とも深く結びついています。織り手であった農家の娘たちが口ずさんでいた労働歌は、「久留米そろばん踊り」として今に伝えられています。これは、明治時代に買い付けに来た商人が、宿屋で芸者とともに機織りの音をそろばんで再現して楽しんだことが始まりとされています。

また、日本の著名な小説家である太宰治も、久留米絣を愛用していたことで知られています。彼は久留米絣を用いた着物を好んで着ていたとされ、その姿は多くの人々に親しまれました。

久留米絣は、単なる織物としてだけでなく、地域の歴史や文化を伝える貴重な遺産として、これからも大切に守り育てられていくことでしょう。

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