伊五十四型潜水艦

伊五十四型潜水艦について

伊五十四型潜水艦は、大日本帝国海軍が建造した潜水艦の艦級です。乙型潜水艦の最終型であり、巡潜乙型改2とも呼ばれます。戦局が悪化する中で建造期間を短縮するため、設計や資材に様々な変更が加えられました。全部で3隻が建造され、1944年に竣工しましたが、「伊58」を除いた2隻は太平洋戦争で戦没しました。主に回天特別攻撃に従事し、戦果を上げました。

建造の経緯

マル追計画において、乙型潜水艦は計画番号S37Cとして7隻が計画されました。しかし、実際に竣工したのは横須賀海軍工廠で建造された3隻のみで、残りは建造中止となりました。伊54型は戦時中の資材不足に対応するため、設計が変更されました。主機は工作が容易な艦本式22号10型に変更されたため、出力と速力は低下しました。また、主電動機も生産の都合で出力が半分程度に抑えられました。しかし、主機の軽量化によって燃料搭載量が増加し、燃費が向上したことで航続距離は増大しました。船体の鋼材も、司令塔のみにDS鋼を使用し、船体内殻には軟鋼材のMS材を使用するなど、資材の調達や生産効率を優先した設計となっています。これにより、建造期間は2年以上から1年8ヶ月程度に短縮されました。

改⑤計画では、計画番号S49Aとして14隻の乙型改2の建造が予定されていましたが、全て計画中止となりました。

兵装

伊54型では、魚雷搭載数が従来の17本から19本に強化されました。また、22号電探と逆探を竣工時から装備していました。しかし、航空機の搭載は行われなかったと推定されます。最終艦となる「伊58」は、回天の搭載に備えて14cm砲を搭載していませんでした。

「伊56」と「伊58」は、1944年末に艦後部に回天4基を搭載するために14cm砲が撤去され（「伊58」は竣工時より非搭載）、1945年には前部の航空兵装も撤去されてさらに2基の回天が搭載されました。

戦歴

「伊54」は1944年にテニアン島への輸送任務に従事した後、レイテ沖海戦に呼応してフィリピン東方へ進出しましたが、撃沈されました。「伊56」はフィリピン東方へ進出した後、回天作戦に2回従事し、沖縄沖でアメリカ駆逐艦によって撃沈されました。「伊58」は回天作戦に3回従事し、終戦直前にアメリカ海軍の重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈するという戦果を挙げました。戦後、アメリカ軍に処分されました。

所属

竣工した伊54型潜水艦は、訓練部隊である第六艦隊第11潜水戦隊に編入された後、第15潜水隊に編入されました。

同型艦

伊号第五十四潜水艦 [II]：マル追計画仮称「第627号艦」。1944年3月31日竣工、1944年10月沈没。
伊号第五十六潜水艦 [II]：マル追計画仮称「第629号艦」。1944年6月8日竣工、1945年4月沈没。
伊号第五十八潜水艦 [II]：マル追計画仮称「第631号艦」。1944年9月7日竣工、終戦時残存、1946年4月1日海没処分。
マル追計画仮称第633号艦から第636号艦：戦局悪化のため計画中止。
改⑤計画仮称第5115号艦から第5128号艦：戦局悪化のため計画中止。

脚注

参考文献

雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0462-8
外山操『艦長たちの軍艦史』（光人社、2005年） ISBN 4-7698-1246-9
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 海軍軍戦備(2) 開戦以後』 第88巻、朝雲新聞社、1975年10月。

関連項目

大日本帝国海軍艦艇一覧

外部リンク

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