伊保島

伊保島の概要

伊保島（いほじま）は、かつて沖縄本島南部の西側に存在した無人島で、他に仲伊保島（なかいほじま）とも呼ばれています。この島は1980年から開始された埋め立て事業により消滅しました。

地理的特徴

伊保島は沖縄本島の南部から約1キロメートルの位置にあり、東シナ海に面していました。島の面積は0.46平方キロメートル、最高標高は約5.4メートルで、750メートルの長さと最大幅150メートルを持つ細長い形状でした。沖縄本島の喜屋武岬近くに位置し、島の周囲には干潟が広がっていました。この区域は「珠数潟原（スズカタバル）」として知られており、報得川から運ばれた泥土が堆積し、干潟が形成されました。

地質は第四紀完新世の沖積層で、特に北部には砂丘があり、戦前にはアダンが繁茂する自然豊かな場所でした。伊保島は美しい礁湖に包まれ、沖縄の豊かな自然環境と生態系を体現していました。

歴史の足跡

この島は沖縄県糸満市に属し、行政上は「潮平（しおひら）」の地域にありました。地元住民は、白い砂州を特徴とする伊保島を「シルシナ」と呼んでいました。戦前は豊見城市与根（よね）の住民が農業を行い、ダイコンやスイカなどを栽培していました。

しかし、戦後の混乱期には伊保島の砂利が採取されるようになり、干潮時にはトラックが行き来していました。1973年に沖縄県が不発弾の保管庫としてこの島を一時使用した際、民間が管理を受け持ち、不発弾を移動させるための道路が設けられ、本島とひも付きました。

その後、沖縄県は火薬庫の移設を進め、1983年には新たな火薬庫が嘉手納に完成しました。このような一連の経緯を経た後、1980年から始まった公有水面埋立事業により、伊保島は埋め立てられました。埋め立てられた面積は約470ヘクタールにも及び、元々のサンゴ礁の約3分の2が消失しました。

現在の状況

埋め立てにより、伊保島周辺は現在の西崎町となり、1993年には伊保島がある場所が西崎町5丁目に編入されました。小字「伊保原」は廃止され、その痕跡はわずかに残るだけとなっています。2011年には、かつて伊保島のあった場所に西崎運動公園が設けられ、地域の新しいシンボルとなっています。

伊保島の存在は、沖縄の歴史や地理、そして地域社会の変遷を知る上での重要な要素となっています。無人島としての短い歴史ながら、自然や文化に深く根ざした場所であったことは否定できません。そのため、伊保島の歴史は沖縄の文化遺産の一部として語り継がれるべきものです。

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