伊利目単于

伊利目単于（いりもくぜんう、紀元前49年没）は、前漢時代の匈奴における対立単于です。彼は匈奴が分裂状態にあった時代に、その勢力争いの一翼を担いました。屠耆単于の小弟にあたり、姓は攣鞮氏ですが、名前は記録に残っていません。

生涯

伊利目単于は、当初、呼韓邪単于の側近として仕えていました。しかし、呼韓邪単于が漢に降伏したことを機に、彼は独自の道を歩むことになります。呼韓邪単于のもとを離れた伊利目単于は、右地（匈奴の西部地域）へと逃亡。そこで2人の兄の残党兵数千人を糾合し、自立して伊利目単于を名乗りました。

自立後、伊利目単于は独自の勢力圏を築こうと試みます。しかし、彼の前に立ちはだかったのは、強大な郅支単于でした。黄龍元年（紀元前49年）、郅支単于は、南下した呼韓邪単于がすぐに戻ってくることはないと判断し、右地へと軍を進めます。この動きは、伊利目単于を討つことを目的としたものでした。

右地において、郅支単于の軍勢は伊利目単于の軍と遭遇し、両者は激しい戦闘を繰り広げます。この戦いにおいて、伊利目単于は討ち死にし、その軍勢5万余人は郅支単于に併合されるという結果となりました。

伊利目単于の生涯は、匈奴の分裂と抗争の時代を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。彼の短い単于としての期間は、匈奴内部の権力闘争の激しさと、漢との関係における複雑さを浮き彫りにしています。伊利目単于の死後、匈奴の勢力図は大きく変動し、その後の歴史に影響を与えることとなりました。

参考資料

伊利目単于に関する記述は、『漢書』の「匈奴伝下」に詳しい情報が記載されています。この史書は、当時の匈奴の社会情勢や、漢との関係を理解する上で重要な資料となっています。

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