伊号第二十九潜水艦

伊号第二十九潜水艦

伊号第二十九潜水艦（いごうだいにじゅうきゅうせんすいかん）は、大日本帝国海軍の伊十五型[[潜水艦]]（巡潜乙型潜水艦）の10番艦として建造されました。当初は伊号第三十三[[潜水艦]]と命名されましたが、後に伊号第二十九潜水艦と改名されています。本艦は、その特異な任務内容から、太平洋戦争における日本の潜水艦の中でも特に著名な艦の一つです。

艦歴

伊号第二十九潜水艦は、1939年（昭和14年）に横須賀海軍工廠で起工され、1941年（昭和16年）に竣工しました。竣工後は呉鎮守府籍となり、第六艦隊第14潜水隊に編入されています。

初期の作戦行動

竣工後、伊号第二十九潜水艦はインド洋方面での通商破壊作戦に従事し、複数の連合国船舶を撃沈しています。1942年4月には、ドーリットル空襲後の米機動部隊捜索に参加しましたが、敵を発見することはできませんでした。その後、オーストラリア東方沖に進出し、シドニー港攻撃の事前偵察を行いました。この際、ソ連貨物船を撃破したものの、アメリカやオーストラリアの駆逐艦による反撃は逃れています。

インド洋での戦果

1942年後半には、再びインド洋での作戦に従事し、イギリスの貨物船やタンカーを多数撃沈しました。特に、英貨客船ティラワの撃沈は、多数の乗客を巻き込んだ悲劇として知られています。また、これらの作戦行動中に、幾度となく敵の追撃を振り切るなど、高い戦技を示しました。

遣独作戦

伊号第二十九潜水艦の特筆すべき任務は、ドイツとの間で行われた「遣独作戦」です。1943年4月には、ドイツに派遣される技術者や、貴重な戦略物資を積載し、ドイツのUボートと会合。インド洋でドイツのUボートU180と合流し、インド独立運動指導者のスバス・チャンドラ・ボースらを移乗させ、ドイツからの軍需物資を積み込みました。この任務の成功により、伊号第二十九潜水艦は一躍有名となりました。その後、ドイツからの物資を積載し、再び日本へ帰還する任務にも就いています。

最後の航海と沈没

1943年11月、伊号第二十九潜水艦は4度目の遣独作戦のため呉を出港。シンガポールで物資を搭載し、ドイツへ向かいました。1944年3月には、ドイツのロリアンに到着。ドイツから兵器設計図や機材などの重要物資を積み込み、日本へ帰還する途中、フィリピン沖のバリンタン海峡で米潜水艦ソーフィッシュの攻撃を受け、撃沈されました。この際、乗員・乗客のほとんどが戦死し、ドイツから持ち帰るはずだった貴重な物資も失われました。

沈没後の影響

伊号第二十九潜水艦が持ち帰るはずだったドイツの技術資料は、後の日本の航空機開発に大きな影響を与えたとされています。特に、ロケット戦闘機「秋水」やジェット戦闘機「橘花」の開発には、ドイツの技術が不可欠でした。また、本艦の沈没は、太平洋戦争末期における日本の苦境を象徴する出来事の一つとなりました。

まとめ

伊号第二十九潜水艦は、太平洋戦争において、通商破壊、特殊潜航艇支援、そして遣独作戦と多様な任務に従事した潜水艦でした。その活躍は、日本海軍の潜水艦戦史において、特筆すべきものとして記録されています。また、その波乱に満ちた生涯は、太平洋戦争という激動の時代を象徴する物語として、後世に語り継がれています。

歴代艦長

艤装員長
伊豆寿一 中佐：1941年8月20日 - 1942年2月27日
艦長
伊豆寿一 中佐：1942年2月27日 -
* 木梨鷹一 中佐：1943年10月10日 - 1944年7月26日戦死

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