伊号第五十三潜水艦

伊号第五十三潜水艦

伊号第五十三潜水艦は、大日本帝国海軍が建造した潜水艦で、伊五十二型[[潜水艦]]（丙型改潜水艦）の2番艦にあたります。同名の艦としては二代目となります。太平洋戦争末期には、人間魚雷「回天」を搭載した特攻作戦に投入され、その悲壮な戦歴を刻みました。

艦歴

1941年（昭和16年）のマル追計画に基づき、呉海軍工廠で1942年（昭和17年）5月15日に起工、同年12月24日に進水しました。1944年（昭和19年）2月15日には、豊増清八少佐が艤装員長に着任し、同月20日に竣工、豊増少佐がそのまま艦長に着任しました。呉鎮守府籍となり、第六艦隊第11潜水戦隊に所属し、訓練に従事しました。

特攻兵器「回天」を搭載

当初は、特四式内火艇を使った特攻作戦「竜巻作戦」の支援を予定していましたが、内火艇の完成度が低く中止となりました。その後、1944年10月には捷号作戦に参加するためレイテ島東方へ進出、米駆逐艦との交戦を経験しました。同年12月には回天搭載工事を受け、回天特別攻撃隊（金剛隊）の一員として出撃しました。

回天特別攻撃隊としての出撃

1945年1月12日、パラオ・コッスル水道沖で回天を発進させ、敵基地施設への攻撃を試みました。しかし、1番艇は発進直後に機関の故障で自沈、他の艇も発進に苦労する中、複数の回天が敵艦に命中したと記録されています。その後の作戦では、敵輸送船団への攻撃を試みましたが、至近距離での遭遇で攻撃の機会を逃したり、敵の護衛艦から激しい爆雷攻撃を受けたりしました。

激戦と損傷

1945年8月4日には、台湾南東沖で米護衛駆逐艦と交戦し、激しい爆雷攻撃を受けました。この攻撃で主蓄電池が破損し、一時的に航行不能に陥りました。しかし、乗員の懸命な応急修理により動力を回復。その後、回天を発進させ、敵艦に損害を与えたとされています。この戦闘で、回天搭乗員の中にはガス中毒で意識不明になる者も出るなど、過酷な状況でした。

終戦とその後

終戦時、伊53は呉に所在していました。戦後は光と呉の間を往復した後、佐世保に回航され、1945年11月30日に除籍されました。その後、1946年4月1日には、五島列島沖でアメリカ軍により海没処分となりました。撃沈総数は1隻、1,400トン、他に軍艦1隻に損傷を与えたとされています。

沈没艦の発見

2017年9月7日、五島列島沖で沈没艦調査を行っていた団体が、本艦を含む沈没艦の艦種を特定したと発表しました。これにより、沈没地点が特定され、現在は上下逆さまの状態で海底に沈んでいることが確認されました。

歴代艦長

艤装員長
豊増清八 少佐：1944年2月15日 -
艦長
豊増清八 少佐：1944年2月20日 -
大場佐一 少佐：1945年2月1日 -

登場作品

人間魚雷出撃す（1956年）
潜水艦イ-57降伏せず（1959年）
特攻の島（2004年〜2017年連載）

脚注

参考文献
雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』光人社、1990年。ISBN 4-7698-0462-8
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。ISBN 4-7698-1246-9
福井静夫『写真日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年。ISBN 4-584-17054-1

伊号第五十三潜水艦は、太平洋戦争末期の厳しい戦況下で、特攻兵器「回天」を搭載し、数々の作戦に参加しました。その戦歴は、当時の日本の潜水艦部隊が置かれた状況と、将兵たちの壮絶な戦いを物語っています。

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