伊藤一長

伊藤一長のプロフィール

伊藤 一長（いとう いっちょう、1945年8月23日 - 2007年4月18日）は、日本の政治家であり、長崎市の市長を歴任しました。本名は「かずなが」で、早稲田大学政治経済学部を卒業後、長崎市開発公社に勤務しました。

生い立ちと職歴

伊藤は長崎市にほど近い山口県で生まれましたが、幼少期に長崎市に移住しました。高校時代から市長を目指しており、大学卒業後は市開発公社で働く傍ら、青年団体協議会の会長を務めるなどしました。1973年には「ながさき若人の船」プロジェクトを立ち上げ、長崎と釜山・那覇の青年たちの交流を深めました。

長崎市議会議員、長崎県議会議員を経て、1995年には自民党の推薦を受けて長崎市長選に立候補し、初当選を果たしました。以降、2003年には再選、さらに2007年には4選を目指して出馬予定でした。

市政と平和運動

市長在任中、伊藤は市政に積極的に取り組みました。特に、原爆の被爆地である長崎における核兵器の撤廃を訴え、国際的な場でもその必要性を語りました。1995年には国際司法裁判所の口頭陳述で、核兵器の使用が国際法違反であることを訴え、涙を流しながらの発言は広く報じられました。また、アメリカの核政策や、原爆の日の記念講演では、一貫して核兵器の危険性を問題視していました。

一方で、彼の市政には批判もありました。旧新興善小学校の取り壊しを進めた際には、被爆者たちとの対立を招くことになりました。また、平和公園の母子像を巡る訴訟にも関わるなど、様々な議論を巻き起こしました。観光振興を重視し、長崎歴史文化博物館や長崎県美術館を開館させ、観光都市としての長崎を盛り上げようとしました。

銃撃事件

伊藤の市長としての道のりは、2007年に悲劇的な事件により暗転しました。4選を目指す選挙期間中の4月17日、彼は選挙事務所に戻る途中、山口組系の暴力団員に背後から銃撃されました。伊藤は病院に搬送されましたが、翌日未明に命を落としました。彼を襲った男は逮捕され、動機は市の政策に対する恨みとされました。伊藤の死は長崎だけでなく、日本全体に衝撃を与えました。

追悼と影響

伊藤の銃撃事件後、彼を偲ぶ行事が多く行われました。さだまさしは平和コンサートで彼の存在を懐かしみ、精霊流しでは伊藤を忍ぶ精霊船が出されました。長崎市民からは「いっちょうさん」の愛称で親しまれていました。

プライベートと趣味

プライベートでは、伊藤は読書や家庭菜園、スキューバダイビングを趣味として楽しんでいました。しかし、彼は喫煙家でもあり、多くの煙草を吸うことでも知られていました。

結語

伊藤一長は、その生涯を通じて地域や市民のために尽力した政治家でした。彼の運動や市政への影響は、長崎市やその周辺に今なお語り継がれています。伊藤の退任後、長崎は新たな時代を迎えることになりますが、彼が残した平和への願いは、今も多くの人々に受け継がれています。

もう一度検索