伊藤公平 (物理学者)

伊藤 公平（いとう こうへい）

1965年生まれの日本の物理学者。慶應義塾長。

専門分野

固体物理学
量子コンピュータ
電子材料
ナノテクノロジー
半導体同位体工学

経歴

兵庫県出身。

慶應義塾幼稚舎から慶應義塾高等学校を経て、1989年に慶應義塾大学理工学部計測工学科を卒業。

1992年にカリフォルニア大学バークレー校にて修士号（材料科学）、1994年に同大学にて博士号（材料科学）を取得。

米国ローレンスバークレー国立研究所特別研究員を経て、1995年に慶應義塾大学理工学部助手として着任。その後、専任講師、助教授を経て、2007年4月より教授に就任。

2017年4月には慶應義塾大学理工学部長・理工学研究科委員長に就任。

2021年5月28日より、慶應義塾長に就任。

その他、東京大学特任教授、国立情報学研究所客員教授、東京大学客員教授、日本物理学会理事、応用物理学会理事、JSTさきがけ研究領域「量子の状態制御と機能化」領域総括、文科省 Q-LEAP 量子コンピュータ分野・プログラムディレクターなどを歴任。

2020年より日本学術会議会員。

慶應義塾長就任

2021年4月26日、慶應義塾評議員会にて次期慶應義塾長に選任された。前慶應義塾長の任期満了に伴うもので、学内投票では研究を通じた国際貢献や共生型の学内環境整備などを掲げ1位となった。当時再選を目指していた長谷山彰より13歳年下の55歳であり、執行部の若返りや国内外での存在感向上を求める声に後押しされた。塾長の任期は2021年5月28日から2025年5月27日までの4年間となる。

幼稚舎出身の塾長としては、潮田江次、安西祐一郎に次ぐ3人目である。

人物

趣味は、家族団欒、愛犬の散歩、テニス。

伊藤忠商事創業者である初代伊藤忠兵衛の来孫であり、父方の曾祖父には伊藤竹之助（元伊藤忠商事社長）、母方の曾祖父には加藤武男（元三菱銀行頭取）がいる。

慶應義塾大学在学中は体育会庭球部に所属し、全日本学生テニス選手権（インカレ）でダブルス上位に進出した経験を持つ。

慶應義塾長就任まで、慶應義塾大学体育会庭球部長を務めた。

慶應義塾長としての活動

塾長就任直後から、新型コロナウイルスワクチン職域接種を開始。

北川雄幸常任理事（医療担当）と協力し、政府が認める最速スケジュールで1日1,000名以上の接種を可能とし、5万人分のワクチン接種環境を整備した。

対象は、慶應義塾の学生・正教職員だけでなく、非常勤教職員、清掃業者、生協、警備員にまで拡大。さらに他大学にも協力し、留学希望者なども対象とした。

職域接種を「キャンパスライフ奪還」施策と位置付け、体育会のみに特権的に認められていた活動許可を全サークルに広げ、留学も解禁した。

研究者としての活動

日本の量子コンピュータ研究の先駆者の一人として知られる。

共著を含め300編を超える論文を執筆。被引用数は慶應義塾長就任時点で8,329回、h指数は44である。

教育者としては、「世界に通用する人材を輩出し続けることが研究を進める原動力にもなる」という考えを持ち、学生の教育・挑戦機会拡充に注力。

自身の専門分野である量子分野では、2018年にIBMの量子コンピュータ研究拠点「IBM Qネットワークハブ」をアジアで初めて慶應義塾大学に誘致（後に東京大学も追随）。

2019年4月にはAI教育強化のために「AI・高度プログラミングコンソーシアム」を開設し、学生の活動及び産学連携をサポートしている。

科学技術を福祉に活かす事を見据え、理工学部長時代に編成したサイバスロン車椅子競技チームが、2020年に世界大会で3位入賞を果たした。

学生の教育・育成

学生の留学も斡旋し、大学にダブルディグリー制度を導入・拡充。

夏季短期留学を可能とする4学期制を理工学部に導入。

自身の研究室にも世界各国から量子コンピュータ研究を志す留学生を受け入れ、留学生が研究室メンバーの1/3を占める年もあった。

若手教授時代には、事務の協力を得て講義や研究室紹介を掲載するYouTubeチャンネルを設立。課外活動で予定が合わない学生でもキャッチアップできる体制とした。

このYouTubeチャンネルが、後に慶應義塾公式のYouTubeチャンネルとなる。

受賞歴

2006年：日本IBM科学賞
2009年：第5回（平成20年度）日本学術振興会賞 (JSPS PRIZE)
2015年：第9回応用物理学会フェロー表彰
2018年：応用物理学会解説論文賞

著書

Defects in Advanced Electronic Materials and Novel Low Dimensional Structures（ウッドヘッド・パブリッシング, 2018年6月）共著
カーボンが創る未来社会 一種類の元素の様々な構造に支えられて（丸善出版, 2017年11月）共著
物性物理学ハンドブック（朝倉書店, 2012年5月）共著
基礎からの量子光学（オプトロニクス社, 2009年11月）共著
スピントロニクスの基礎と材料・応用技術の最前線（シーエムシー出版, 2009年6月）共著
Lateral Alignment of Epitaxial Quantum Dots (NanoScience and Technology)（Springer, 2007年）共著
スピンエレクトロニクスの基礎と最前線〈エレクトロニクス材料・技術シリーズ〉（シーエムシー出版, 2004年7月）共著
'05最新半導体プロセス技術（プレスジャーナル, 2004年7月）共著
赤外線加熱工学ハンドブック（アグネ技術センター, 2003年11月）共著
別冊・数理科学「量子情報科学とその展開 量子コンピュータ・暗号・情報通信」（サイエンス社, 2003年4月）共著
現代物理最前線7（共立出版, 2002年12月）共著
先端物理辞典（丸善, 2002年9月）共著
電気と磁気の新しい交わり スピンが拓く21世紀のエレクトロニクス（クバプロ, 2001年11月）共著

参考文献

人事興信所編『人事興信録 第19版 上』人事興信所、1957年。
人事興信所編『人事興信録 第37版 上』人事興信所、1993年。
人事興信所編『人事興信録 第45版 上』人事興信所、2009年。

外部リンク

伊藤　公平 | 慶應義塾大学理工学部
伊藤研究室慶應義塾大学 研究室紹介
伊藤研究室慶應義塾大学 研究内容
量子コンピュータを実現する鍵は「シリコン」？－同位体に魅せられた30年、そしてダイヤモンド－：慶應義塾
慶應義塾研究者情報データベース 研究者詳細 - 伊藤　公平
経歴 - 伊藤　公平
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