加藤武男

加藤武男：激動の時代を駆け抜けた銀行家

加藤武男（1877年6月5日 - 1963年10月17日）は、日本の銀行家であり、吉田内閣経済最高顧問を務めました。激動の時代の中、三菱銀行の発展に大きく貢献した人物です。

生い立ちと初期のキャリア

加藤武男は、栃木県上都賀郡落合村（現在の今市市）で、代々庄屋を務める裕福な家庭に生まれました。1901年に慶應義塾大学部理財科を卒業後、横浜正金銀行を志望するも、父親の勧めで三菱合資会社銀行部に入社しました。

三菱銀行での活躍

京都支店長、大阪支店長を経て、1919年に銀行部が独立し三菱銀行となると、春藤和らと共に常務取締役に就任しました。創設と同時に常務となった加藤は、その後の恐慌、関東大震災、金融恐慌、満州事変、金輸出再禁止など、激動の時代に経営に携わりました。1938年には会長に就任し、辣腕を振るいました。

1943年には第百銀行との合併を成功させ、店舗規模を倍増させました。この合併を機に頭取制に改められ、加藤は新銀行の頭取に就任しました。

その他、東京海上取締役、三菱本社取締役、三菱商事監査役、三菱重工業監査役、三菱化成監査役、三菱鉱業監査役など、三菱グループ各社の役員を兼任し、三菱財閥の中核人物として活躍しました。

戦後の活動

第二次世界大戦後、一時公職追放となりましたが、後に解除され、三菱銀行相談役に就任。戦後も三菱財閥の実力者として影響力を持ち続けました。戦前の財閥解体後、三井財閥の池田成彬が財界代表として政官の要職についたのとは対照的に、加藤は三菱グループ内で重きをなしました。

吉田内閣経済最高顧問、宮内庁参与、経団連顧問、日本銀行参与、日本興業銀行参与、全国銀行協会連合会会長、東京銀行集会所会長など、数々の要職を歴任し、日本の経済界に大きく貢献しました。

華麗なる一族

加藤武男の妻の兄は、三井財閥の実力者であった池田成彬です。子には三菱銀行副頭取や三菱製紙会長を務めた加藤武彦がおり、その孫には慶應義塾長の伊藤公平がいます。また、妻の姉・芳は内務官僚の宇佐美勝夫に嫁いでおり、その子には第2代宮内庁長官の宇佐美毅と三菱銀行頭取・日銀総裁を歴任した宇佐美洵がいます。さらに、三菱ふそうトラック・バスの前会長・宇佐美隆は宇佐美勝夫・芳夫妻の孫にあたります。

このように、加藤家は池田家を通じて三菱の創業者一族である岩崎家、そして三菱グループと縁の深い宇佐美家と姻戚関係にあり、日本の経済界、政界に大きな影響力を持つ一族の一員でした。

加藤武男は、激動の時代を生き抜き、三菱銀行の発展に貢献しただけでなく、日本の経済界を牽引した重要な人物として、その名が刻まれています。

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