伊藤吉之助

伊藤吉之助の生涯と業績

経歴

伊藤吉之助（いとう きちのすけ）は、1885年に山形県酒田市で生まれました。彼の家は雑貨卸商を営んでおり、旧姓は須田です。1903年には山形県立荘内中学校を卒業し、その後第一高等学校に進学。卒業後は東京帝国大学の文学部哲学科に入り、ここでさまざまな著名な同級生と出会いました。彼らの中には安倍能成や宮本和吉が含まれ、長い哲学の旅が始まったのです。

1909年に卒業論文を提出し、カントを中心とした空間論に取り組みました。その後は大学院に進学し、5年間哲学の研究を続けました。

教職と留学

伊藤は1911年から1918年まで東京帝国大学の副手を務め、1920年には慶応大学の留学生としてドイツに渡ります。ドイツではベルリンやフライブルクといった大学で新カント派の哲学を深く学びました。1922年に日本に帰国し、翌年には東京帝国大学講師に就任。その後、助教授、教授へと昇進し、1930年には教授職を確立しました。この時期には『岩波哲学小辞典』を編纂するなど、日本の哲学界において重要な役割を果たしました。

戦後の貢献

1945年、伊藤は東京帝国大学を退官し、北海道帝国大学法文学部の設立準備に参加します。1947年に法文学部が設立されると、その初代学部長となり、さらに1950年には初代文学部長として哲学教育を強化しました。しかし、1951年に再び東京に戻り、中央大学にて教授として活動しました。この間に、文学部長も経験し、哲学研究の普及に尽力しました。

晩年と遺産

晩年には健康を害し、脳軟化症を患うこととなりました。彼の著作である『哲学概論』や『最近の独逸哲学』は、彼の研究の集大成でしたが、晩年の念願であった「哲学史の歴史」の執筆を完成させることはできませんでした。1961年に他界し、その日には瑞宝章も贈られました。彼の功績を称えて、遺族から彼の故郷に寄贈された蔵書や著書の原稿は「光丘文庫」に収納されています。

家族

彼の妻である高橋てるは、仙台藩士族の子孫であり、1915年には結婚。伊藤の学問への情熱は、家族とも深く結びついていました。

評価

伊藤吉之助は専門的にドイツ哲学、特に新カント派についての研究を行い、北海道大学と中央大学における哲学教育の礎を築きました。彼の影響は戦後の日本の哲学界において非常に大きく、今なお多くの学者に受け継がれています。

もう一度検索