伊藤忠製糖

伊藤忠製糖株式会社：効率経営と業界再編を生き抜いた製糖会社

伊藤忠製糖株式会社は、かつて『クルル印』の砂糖で知られた、愛知県碧南市に本社を置く製糖会社でした。伊藤忠商事系列に属し、名古屋圏を中心に高い市場シェアを誇っていました。

同社は1970年代から積極的に生産施設の合理化と生産性向上に取り組みました。その結果、1982年3月の砂糖売り戻し臨時特例法（各社の生産シェアを固定する法律）期限切れの際、業界全体が延長を希望する中、伊藤忠製糖は自社の競争力に自信を持ち、延長に反対という異例の決断を下しました。

この大胆な決断は、同社の経営戦略の要諦を示しています。市場を名古屋・中京圏に絞り込み、人員を他社と比べて大幅に削減するなど、徹底した省力化を進めた結果、1982年3月以降の砂糖価格の急落、いわゆる砂糖乱売競争の中でも黒字を維持することに成功しました。

1982年以降の砂糖不況と製糖業界再編の波の中でも、伊藤忠製糖は独自の道を歩みます。特定産業構造改善臨時措置法の指定業種となる動きにも反対し、1983年9月20日の同法適用申請においても、精糖工業会加盟社の中で数社だけが申請を見送る中、同社は申請に加わりませんでした。

その後も、効率的な経営は継続されました。1986年度の精糖工業会加盟社の平均操業率が73％だったのに対し、伊藤忠製糖は104％という高い操業率を達成しました。これは、同社の生産性と経営効率の高さを如実に示すものです。

2002年には、宮崎県日向市の第一糖業を傘下に収め、事業規模の拡大を図りました。しかし、時代の流れは業界再編を加速させます。2022年6月、住友商事系の日新製糖との株式交換が発表されました。この結果、2023年1月には、統合後の持株会社であるウェルネオシュガー株式会社の子会社となりました。そして、2024年10月1日、ウェルネオシュガーに吸収合併され、伊藤忠製糖株式会社は歴史の幕を閉じました。かつての本社工場は、現在ではウェルネオシュガーの中部工場として稼働を続けています。

伊藤忠製糖は、その歴史を通して、常に効率性と競争力を追求し続けました。過酷な競争環境の中でも独自の戦略で生き抜き、業界再編の大きな流れの中で、一つの時代を築いたと言えるでしょう。その歴史は、日本の製糖業界の変遷を知る上で貴重なものです。 伊藤忠製糖の成功と解散は、企業の成長と衰退、そして業界再編の複雑なダイナミズムを示す象徴的な事例と言えるでしょう。

関連企業として、久米島製糖株式会社や南栄糖業株式会社などが挙げられます。これらの企業との関係性についても、今後の研究課題と言えるでしょう。

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