伊藤誠吾

人物

伊藤 誠吾（いとう せいご）は、1977年7月17日に秋田県南秋田郡飯田川町（現在の潟上市）で生まれた日本の現代芸術家です。秋田県立秋田南高等学校を経て、東北福祉大学を卒業しています。現在は秋田県を主な活動拠点として、多岐にわたる表現活動を行っています。

彼の作品は、映像、音楽、絵画といった既存のジャンルにとらわれず、インスタレーション、演劇、執筆など、非常に多様なメディアを用いて展開されます。制作においては、特別な機材や素材を用いるのではなく、家庭用のハンディーカメラ、段ボール、新聞紙、クレヨンといった、私たちの身近に存在するありふれたものを使うのが特徴です。これにより、作品は日常性と地続きでありながらも、独自の視点やユーモアを提示します。

作品の根底にあるテーマは、社会的な組織や家庭、仕事といった枠組みから離れた、人間本来のありのままの姿や個人の本質を探求することにあります。既存の価値観や形式に囚われず、時に挑発的、時にユーモラスなアプローチで、人間や社会に対する問いを投げかけます。

主な活動

伊藤誠吾の活動は国内に留まらず、国際的な展開も見られます。2001年には、ニューヨークにおいて、ポーランド人、ブルキナファソ人のアーティストたちと共に「アバンギャルド撲滅プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトは、アバンギャルド芸術の概念そのものに問いを投げかけるものであり、その一環として、ニューヨークの象徴とも言える五番街で、全身を白く塗って歩くというパフォーマンスを行いました。また、高級ブランド店に立ち寄りアクセサリーを試着したり、街中に設置した檻の中で3日間生活したりと、都市空間における現代社会の消費文化や規範意識に対する、過激かつアイロニカルな行為を展開しました。さらに、タキシード姿で花束を持ち、ホワイトハウスのインターホンを押して当時のブッシュ大統領に面会を試みるなど、権力や体制に対する独特なアプローチも見せています。

2005年には、東京で活動する劇団「あぁルナティックシアター」に入団し、舞台芸術の分野にも活動の幅を広げました。

秋田での活動も非常にユニークです。2010年には、秋田市文化会館の大ホールという格式ある場所で、大型のテレビモニターを一台置き、映像をただ流し続けるというインスタレーション作品「愛と感動のプロパガンダ」を発表しました。同年、秋田市のアトリオン美術ホールで開催された「人間はどこまでアホなのか」と題する展覧会では、展示室に枝豆一粒だけを置くという極めてミニマルな作品を展示し、来場者に強烈な印象を与え、芸術の概念そのものや鑑賞者の視点に対する問いを投げかけました。

2012年には、東京南青山のスパイラルガーデンで開催されたアートフェアにも出展するなど、秋田を拠点としつつも、国内外で精力的に活動を展開しています。

主な作品

彼の作品は多岐にわたり、以下のようなものがあります。

インスタレーション: 『人間はどこまでアホなのか』、『愛と感動のプロパガンダ』、『長渕がいっぱい』、『マザー・ファッカー』、『ドカ雪まつり』、『自由・平等・博愛』、『履歴書』、『アールブリュット展』など。
音楽: 『首都』、『口笛コンサート』、『鼻は咲く』。
映像: 『世界遺産・伊藤キヨヱ』、『秋田の町中でウンコと叫ぶ』、『ロッキー・バルボア』、『ひとりVSカメラ』、『ショッピングモール』、『マッチョ』。
舞踊: 『国指定重要無形民俗文化財・バカおどり』。
絵画: 『秋田県25市町村長図絵』。
著作: 『我思うゆえに我あり』、『バカであれ！』、『ゆりかごから墓場まで』。
* 演劇: 『劇団・知的』。

これらの作品リストからもわかるように、表現形式やテーマは多様で、既成概念にとらわれない自由な発想に基づいています。

その他の活動

アーティストとしての活動に加え、メディアへの出演経験もあります。テレビ番組では「ダウンタウンの笑ってはいけない警察」、映画では河崎実監督作品「あっ！お皿に首が乗っている」に出演するなど、パフォーマーとしても活動しています。

伊藤誠吾は、身近な素材や日常の中に潜むユーモア、そして人間存在への深い洞察を通して、観る者や社会に問いを投げかけ続ける独自のスタイルを持つ芸術家です。彼の活動は、既存のアートシーンに新たな視点をもたらしています。

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