伊豆能売

伊豆能売命：謎に包まれた祓戸大神の一柱

伊豆能売命（いづのめ）は、日本神話に登場する女神です。しかしながら、その存在は謎に包まれており、多くの点で不明瞭な部分が残されています。主に『古事記』にのみ記述があり、『日本書紀』には一切登場しないことから、その存在感は他の神々とは大きく異なっています。

誕生と役割

『古事記』によれば、伊豆能売命は伊邪那岐命（いざなぎのみこと）が黄泉の国から生還した際に、黄泉の穢れから生まれた禍津日神（まがつひのかみ）二柱（大禍津日神、八十禍津日神）がもたらす災厄を祓うために、直毘神（なおびのかみ）二柱（神直毘神、大直毘神）とともに誕生したとされています。この記述から、伊豆能売命は、災厄や穢れを祓う神、すなわち祓戸大神の一柱として理解することができます。

しかし、その誕生や活動に関する具体的な記述は皆無であり、どのような役割を果たしたのか、どのような神格を持っているのかといった点は、ほとんど明らかにされていません。

祀られていた神社と現状

『延喜式神名帳』には、出雲国出雲郡に「神魂伊豆之賣神社（かみむすびいづのめじんじゃ）」が記載されており、伊豆能売命を祀っていたと推測されています。しかし、この神社は後に伊努神社に合祀されたとされ、現在では伊豆能売命を祭神とする神社は確認されていません。『延喜式神名帳』以外の史料も不足しており、伊豆能売命の信仰の痕跡を辿ることは困難です。

一方で、三重県津市の加良比乃神社（からひのじんじゃ）は、元伊勢伝承地の一つとして知られています。この神社の起源は、倭姫命（やまとひめのみこと）が天照大御神を奉戴して「片樋宮」を建立した跡地に「御倉板舉神」と「伊豆能賣神」を祀ったことに由来すると伝えられています。ただし、この伝承は伊豆能売命の信仰が地域的に限定的に残されていた可能性を示唆するものの、確固たる証拠とは言えません。

結論

伊豆能売命は、日本神話において存在は確認できるものの、その出自、事績、信仰の実態など、多くの謎が残されている神です。祓戸大神の一柱として、災厄や穢れを祓う役割を担っていたと考えられていますが、具体的な活動や神格については、今後の研究が待たれるところです。限られた史料からの推測が現状であり、より詳細な理解のためには、さらなる調査が必要となります。現存する神社との関連性についても、更なる検証が必要です。

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