伊賀忍法帖

『伊賀忍法帖』

『伊賀忍法帖』は、日本の著名な推理小説作家山田風太郎による長編の伝奇小説で、1964年に『漫画サンデー』に連載されました。本作は“忍法帖もの”シリーズの第11作にあたり、連載終了後すぐに単行本として発表されました。

あらすじ

物語は、戦国時代を舞台に展開します。謎多き男、果心居士が登場し、多くの術を使いこなす彼は、武将松永弾正のもとに呼び出されてきました。弾正は三好義興の妻である美しい右京太夫に恋心を抱いており、彼女を手に入れようと策略を練るのです。果心は「淫石」という媚薬を作ることを提案します。この「淫石」は女性の心を虜にする催淫剤であり、果心の部下である7人の忍法僧が女性を襲い、得た愛液を用いて作り上げられるのです。

そのおぞましい計画を耳にした者たち、千宗易や柳生新左衛門は恐怖に震えました。計画は実行に移され、忍者僧たちは多くの女性を捕らえ、無惨にも陵辱を重ねていきます。多くの女性が命を落とし、生き残った者たちは狂気に囚われてしまいます。この悪行の数々に、指揮をとった弾正さえも心を痛めるほどでした。

物語の深層には、伊賀忍者・笛吹城太郎の妻、篝火が捕らえられた事件が絡んでいます。篝火は元遊女であり、城太郎と駆け落ちを果たしたものの、可愛い美しさゆえに根来僧たちに襲われて拉致されてしまいます。彼女は忍者僧たちの非道な行いに抵抗し、自らの命を絶つ選択をします。篝火は右京太夫に激似であったため、弾正は彼女を生き返らせ、自らの愛妃にしてしまうのです。

一方で、篝火を失った城太郎もまた、彼女を探し続ける努力をしていました。やがて、瀕死の女性が「淫石」を持参し、彼に接触します。彼女は篝火の記憶を持った存在であり、果心の計画の真相を明らかにしました。城太郎は、彼女を守り、松永弾正や忍者僧たちに復讐を誓うことになります。

主な登場人物

• - 笛吹城太郎: 伊賀の忍者であり、本作の主人公。駆け落ちした篝火を追い求め、忍者僧たちに立ち向かいます。
• - 篝火: 元遊女で、城太郎に愛されて出奔。忍者僧に捕らえられますが、自らの意思で自害します。
• - 右京太夫: 松永弾正の主君、三好義興の美しい妻。この物語の黒幕とも言える存在です。
• - 果心居士: 幻術の使い手であり、弾正の計画に暗躍するキャラクター。
• - 七天狗: 忍法僧たち。各々が異なる強烈な忍術を持ち、弾正の命令で罪を重ねます。

映画化情報

1982年、東映によって映画化され、配給収入15億2500万円を記録しました。映画は、原作とは異なる大胆な脚色が施され、観客の注目を集めました。また、映画製作にあたり、新人女優の採用コンテストも開催され、話題を呼びました。

『伊賀忍法帖』は、忍者を題材とした作品群の中でも特に評価が高く、日本の伝奇小説の傑作として多くの人に親しまれています。その魅力は、緊迫感溢れるストーリーと、多彩なキャラクターたちによって生み出される深いドラマにあります。

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