伊賀津臣命

伊賀津臣命の伝説と系譜

伊賀津臣命（いかつおみのみこと）、生没年は不詳ですが、古代日本においては名の知られた豪族として、中臣連を創始した人物です。彼に関する歴史的記録は多くは存在しませんが、『近江国風土記』の逸文に彼の名が見られます。この逸文では、伊賀津臣命は伊香刀美（いかつおみ）と呼ばれ、さらに『尊卑分脈』の記録では伊香津臣命とも表記されています。

概要と物語

伊賀津臣命に関して特筆すべき点は、『記紀』には登場しないことや、具体的な事績が知られていないことです。彼の名が聞かれる場面は、主に近江の余呉湖にまつわる羽衣伝説です。この伝説において、伊香刀美は近江国の伊香郡与胡郷に住む山人として描かれています。

物語の中では、天之八女（あまのやめ）が白鳥と共に与胡郷南方の伊香小江に降臨し、水浴びを行う姿を伊香刀美が目撃します。一目惚れをした彼は、白犬を遣って密かに天女の天衣を奪い取る決断をしますが、この天衣は彼女の末妹のものでした。この事件が原因で天女は地上に留まらざるを得なくなり、伊香刀美は彼女を妻として迎え入れることになります。彼らの間には、意美志留（おみしる）、那志登美（なしとみ）、長女の伊是理比咩（いぜりひめ）、次女の奈是理比売（なぜりひめ）の四人の子供が授けられ、これが後の伊香連の祖となります。

伝説の最後では、天女の母が天衣を見つけ、再び天に帰ることになりますが、伊香刀美は一人残され、虚しさを感じながら日々を過ごす様子が描かれています。彼は孤独に溜息をつき、虚空を見つめる姿が印象的です。

祭神と信仰

伊賀津臣命は、伊香具神社の祭神としても知られています。社伝によれば、彼は上古の時代、未開の湖沼地であった地域を開拓し、その後その子孫を守る役割を果たしたとされています。この神社は信仰の対象となり、地域の人々から親しまれています。

家族構成と系譜

伊賀津臣命の父は御食津臣命であり、妻は逸文において天女の末妹とされています。彼とその妻の間に産まれた子供たちは後の世代へと続く系譜を形成し、特に意美志留は臣知人命に繋がるとされています。

伊賀津臣命の物語は、古代日本の神話にあたるもので、愛と別れのテーマが表現されていると言えます。彼の伝説は、後の時代においても語り継がれ、地域の文化の一部として根付いています。

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