伍子胥

伍子胥：激動の生涯と悲劇的な最期

伍子胥は、春秋時代の呉において重要な役割を果たした政治家であり、武将でした。その生涯は、壮絶な復讐劇と、君臣間の複雑な関係、そして時代の波乱を反映したドラマティックな物語です。

楚での苦難と呉への亡命

伍子胥は、楚の重臣の家に生まれました。しかし、父と兄が権力闘争に巻き込まれ、処刑されてしまうという悲劇に見舞われます。この出来事が、彼の人生における復讐の誓いを固める契機となりました。

父と兄の死後、伍子胥は楚を逃亡し、呉へと亡命します。亡命の道中は過酷を極め、飢えと病に苦しみながら、命からがら呉へとたどり着きました。この経験は、彼のたくましさと忍耐力を育んだと言えるでしょう。

呉での活躍と楚への復讐

呉では、公子光（後の闔閭）に仕え、その才能と忠誠心で頭角を現しました。伍子胥の進言によって、呉は楚との戦争に勝利し、楚の首都郢を陥落させました。

かねてよりの宿敵であった楚の平王の墓を暴き、遺体を鞭打つという復讐を果たしたエピソードは有名です。「死者に鞭打つ」という故事の由来にもなっています。また、この時の彼の心情を表した「日暮れて道遠し」という言葉も、広く知られています。

しかし、復讐の成功は、彼自身の悲劇の幕開けでもありました。

闔閭の死と夫差との確執

闔閭の死後、後を継いだ夫差は、伍子胥の進言を軽視するようになり、両者の間には深い溝ができていきます。夫差は越への警戒を怠り、中原への進出に執着するようになりました。

伍子胥は、夫差の政策に危惧を抱き、何度も忠告を繰り返しますが、聞き入れられることはありませんでした。夫差は、伍子胥の忠告を無視し、越との関係を悪化させていきます。

悲劇的な最期

最終的に、伍子胥は夫差によって自害を命じられます。その最期は、悲劇的でありながら、彼の揺るぎない信念と、復讐の念がいかに彼を突き動かしていたかを示すものとなっています。

伍子胥は、「自分の墓の上に梓の木を植えよ。それを以って（夫差の）棺桶が作れるように。自分の目をくりぬいて東南（越の方向）の城門の上に置け。越が呉を滅ぼすのを見られるように」と言い残して自害しました。

彼の遺体は、川に投げ込まれ、無念のうちに生涯を終えました。

伍子胥の評価

伍子胥の生涯は、激しい情熱と、復讐の念に彩られたものですが、同時に彼の忠誠心、卓越した政治力、そして武将としての才能も評価されています。一方で、彼の激情的な性格が、最終的には彼の破滅を招いたとも解釈されます。

歴史上、伍子胥は様々な形で評価されてきました。彼の行動を非難する声もあれば、その生き様に共感を寄せる声もあります。彼の生涯は、人々に多くの示唆を与え続ける、まさに時代を超えたドラマと言えるでしょう。

逸話

伍子胥の命日とされる5月5日は、端午節として知られ、現在でも広く祝われています。これは、伍子胥の生涯と深い関連があると考えられています。

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