闔閭

春秋時代の覇者、呉王闔閭：栄光と悲劇の生涯

呉王闔閭は、中国春秋時代を代表する人物の一人です。その生涯は、王位争いから楚への圧勝、そして越との死闘、そして悲劇的な最期まで、ドラマチックな出来事に満ち溢れています。本稿では、史記や春秋左氏伝などの史料に基づき、闔閭の生涯を詳細に紐解いていきます。

王位継承の暗闘：陰謀と策略の渦中

闔閭の王位継承は、決して平穏なものではありませんでした。史記によれば、呉の初代王・寿夢には複数の息子がおり、賢明さで知られた末子の季札に王位が譲られる予定でした。しかし、季札はこれを固辞し、兄たちが順番に王位を継承していくことになります。闔閭は、この順番を無視して王位を継承すべきだと考え、当時の呉王僚を暗殺。専諸という刺客を用いたこの大胆なクーデターによって、闔閭は王位を手に入れました。

しかし、春秋左氏伝は異なる見解を示しています。同書によれば、寿夢の息子たちは順番に王位を継承し、僚が王位を継承したのは自然な流れだった可能性が高いとされています。季札は僚の弟であり、闔閭は僚の甥にあたるため、史記の記述には、事実とは異なる部分も含まれていると言えるでしょう。寿夢と季札の逸話に関しても、兄弟相続や末子相続の風習を美談として脚色した可能性が指摘されています。 これらの史料の食い違いは、春秋時代の歴史解釈の複雑さを示す一例と言えるでしょう。

楚への圧勝と越との死闘：栄光と挫折

王位に就いた闔閭は、伍子胥や孫武といった優れた家臣たちの協力を得て、呉を強大な国へと発展させました。特に、楚との戦いはその力量を示すものです。闔閭9年（紀元前506年）、柏挙の戦いで楚の首都郢を陥落させるという偉業を達成しました。この勝利は、呉の勢力を大きく高め、春秋五覇の一角を占めるまでに成長させる原動力となりました。

しかし、闔閭の治世は、栄光ばかりではありませんでした。越との対立が激化し、闔閭19年（紀元前496年）には、越王勾践との欈李の戦いで敗北を喫します。この戦いで負った矢傷が原因で、闔閭は病没しました。臨終の際、彼は息子の夫差に勾践への復讐を誓わせたと言われています。この遺言は、夫差による越への復讐、そして春秋時代の覇権争いを更に激化させることになります。

闔閭の評価：春秋五覇の一人

闔閭は、その功績から春秋五覇の一人に数えられることがあります。しかし、その王位獲得はクーデターによるものであり、また越との戦いで敗北を喫した事実も存在します。彼の生涯は、成功と失敗、栄光と悲劇が複雑に絡み合ったものでした。これらの複雑な要素を踏まえることで、春秋時代の政治情勢や、覇者たちの生き様をより深く理解することができるでしょう。 闔閭は、まさにその時代の激動を象徴する人物と言えるでしょう。彼の功績と失敗は、後世に多くの教訓を与え続けています。

もう一度検索