伏見奉行

伏見奉行：近世における重要拠点の管理と西国大名の監視

伏見奉行は、江戸幕府の役職の一つであり、遠国奉行に分類されます。その管轄区域は伏見町、御城山（旧伏見城）、周辺の8カ村に及びました。江戸幕府成立当初は、畿内近国8カ国を統括する上方郡代を兼任するなど、その権限は非常に大きかったと言えるでしょう。

伏見は宇治川（淀川）を利用した水運の要衝、伏見港を有し、京都と大坂を結ぶ重要な交通拠点でした。そのため、伏見奉行は参勤交代を行う西国大名の監視や京都御所の警備といった、幕府の治安維持に不可欠な役割も担っていました。これらの重要な任務から、他の遠国奉行とは異なり、身分の高い大名格の者が任命されることが多かったようです。

伏見奉行の身分は老中支配・諸大夫に位置づけられ、役高は設定されていませんでした。配下には与力10騎、同心50人が置かれていました。寛文6年（1666年）に設置されて以降、元禄9年～11年（1696年～1698年）と文化5年～7年（1808年～1810年）の2度の中断期間がありましたが、慶応3年（1867年）の廃止まで、幕府政治において重要な役割を担い続けました。

伏見奉行の沿革と変遷

桃山時代から江戸時代初期にかけて、伏見町と周辺8カ村は伏見城を中心に大名屋敷が立ち並ぶ政治都市として栄え、伏見城番が町奉行を兼任していました。しかし、元和9年（1624年）の伏見城廃城に伴い、状況は変化します。大名小堀政一が最初の伏見奉行に任命され、寛永9年（1632年）には富田信濃守屋敷跡に伏見奉行所が新築されました。さらに寛永11年（1634年）、小堀政一は上方郡代を兼任することとなり、伏見奉行の権限はますます強まりました。

寛文6年（1666年）には奉行職が改めて創設され、それ以前は水野忠貞が小堀政一の後に上方郡代として伏見で活動していました。実質的には、上方郡代の職務が京都[[町奉行]]、京都代官、伏見奉行に分割されたと解釈できます。身分上は老中支配でしたが、職務上は京都所司代の下に属し、京都[[町奉行]]や奈良奉行と同様の体制でした。

歴代奉行と奉行所

数多くの者が伏見奉行を務めましたが、その中には、小堀政一、水野忠貞、仙石久俊、戸田忠利といった、いずれも幕府において重要な役割を担った人物が含まれています。彼らの在任期間や功績については、それぞれの個別記事でより詳細に解説されています。

寛永9年（1632年）に新築された伏見奉行所は、奉行の執務空間と私的な住居空間を兼ねていました。特徴的なのは、茶室「松翠亭」「転合庵」「成趣庵」などが設けられていた点です。これは、初代伏見奉行の小堀政一が遠州流茶道の祖であったことに由来し、政務と茶の湯が深く結びついていたことを示しています。奉行所の跡地は現在、京都市営桃陵団地となっており、碑が残るのみとなっています。

参考文献

井上幸治「伏見奉行与力の変遷」『京都市文化財保護課研究紀要』第3号、京都市文化財保護課、53-80頁、2020年。
小倉宗『近世中後期の上方における幕府の支配機構』京都大学、2008年、37-71頁。

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