休みの国

休みの国（やすみのくに）は、シンガーソングライターである高橋照幸（1948年3月10日 - 2016年）が主宰した日本の音楽プロジェクトです。1969年の始動以来、特定のメンバーに固定されず、高橋氏を中心として断続的ながらも独自の活動を展開しました。

結成とデビュー

プロジェクトの端緒は1969年3月に遡ります。当時、和光大学に在学していた高橋照幸氏は、寮で同室だった谷野ひとし氏を通じて、日本のロック史に名を刻むバンド、ジャックスと親交がありました。高橋氏はジャックスの合宿に運転手として同行した際、練習の合間に自作の楽曲を録音することを試みます。この時の演奏をバックで支えたのは、早川義夫氏を除く当時のジャックスのメンバーであり、中でもドラムはつのだ☆ひろ氏が担当していました。このセッションで生まれた音源が後の休みの国の原点となります。

そして、この録音からわずか数ヶ月後の1969年6月、休みの国はアングラ・レコード・クラブ（URC）レコードより、セルフタイトルのデビューアルバム『休みの国』をリリースします。当時の日本のアンダーグラウンド音楽シーンにおいて、その異彩を放つ音楽性は注目を集めました。

高橋照幸の活動と人生

1973年12月に高橋照幸氏がヨーロッパから帰国して以降も、休みの国としての活動は続きました。メジャーな舞台とは距離を置きつつ、アルバムの自主制作やライブ活動を精力的に行います。音楽活動と並行して、高橋氏の生活は多様な側面を持っていました。湘南の造船所で働いた時期を経て、1978年からは東京都町田市に居を構えます。その後もいくつかの職を転々としますが、最終的には骨董品店を開き、晩年までその営みを続けました。音楽家でありながら、地に足のついた生活を送るその姿勢は、休みの国の音楽にも通じるものがありました。

「悪魔巣取金愚」のカルト人気

休みの国の楽曲の中でも、特に異彩を放ち、後年カルト的な人気を獲得したのが「悪魔巣取金愚」です。この楽曲は、1977年6月に制作された自主制作映画『特攻任侠自衛隊』の主題歌として使用されました。時が経ち、この映画を観た漫画家・平野耕太氏が自身の代表作『HELLSING』の中でこの曲の歌詞を引用したことから、改めて注目を集めることになります。さらに、大槻ケンヂ氏やキノコホテルなど、様々なアーティストによってカバーされたことも、この楽曲、そして休みの国の知名度をアンダーグラウンドシーンを超えて広げるきっかけとなりました。その強烈な歌詞とサウンドは、多くのリスナーに衝撃を与え、根強い支持を得ています。

作品と未発表音源

休みの国は公式にいくつかの作品を発表しています。シングル、アルバム、そして1991年にはライブビデオ『休みの国 LIVE in クワトロ』（VHS）もリリースされました。しかし、その創作活動はこれだけに留まらなかったようです。2005年頃には回転ねこレーベルから新譜リリースの告知がありましたが、残念ながらこれは実現せず、告知自体もいつの間にか消滅してしまいました。

しかし、高橋照幸氏の残した音源は、公式に発表されたもの以外にもかなりの数に上ると言われています。これらの未発表音源の一部は、YouTubeなどで確認されており、高橋氏の尽きることのない創作意欲と、公式発表されなかった多くの楽曲の存在を示唆しています。休みの国の全貌は、今なお多くの謎に包まれていますが、その独創的な音楽世界は時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。

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