会式イ号航空船

会式イ号航空船 - 日本初の軍用飛行船

会式イ号航空船（かいしきイごうこうくうせん）は、日本の臨時軍用気球研究会が手掛けた飛行船であり、1911年に完成しました。当初は会式イ号飛行気球と呼ばれていましたが、1913年に名称がイ号航空船に変更されました。その後、この飛行船は会式イ号飛行船としても知られるようになりました。

設計と製造の背景

臨時軍用気球研究会は、小型の軟式飛行船の開発を目指し、1910年6月から会式イ号の設計を始めました。設計には、大日本帝国陸軍と海軍からの技術者が参加し、特に徳永熊雄工兵大尉と岩本周平技師、さらに小浜方彦機関大尉がその中心となりました。1910年秋には実物の建造がスタートし、山下誠一海軍機関大尉や徳川好敏陸軍工兵大尉もプロジェクトに参加しています。

気嚢の製造は山田猪三郎が率いる気球製作所が行い、材料としては表面がゴム引きの木綿布、裏面にはゴム引きの絹布が使用されました。吊船の製造は平岡鉄工所が担当し、エンジンにはイギリスのウーズレー製60馬力の水冷4気筒エンジンを採用しました。

初飛行とその後

1911年の8月に側水道で竣工し、日本初の軍用飛行船としての地位を確立しました。初飛行は同年10月24日または25日に所沢飛行場で行われ、周囲を一周する形で運航されました。この試験飛行では、10月27日や28日まで続けられ、30km以上の長距離飛行や、当時の航空機であるアンリ・ファルマン1910年型との同時飛行も実施されました。

初飛行時の操縦は伊藤赴陸軍工兵中尉が行い、彼以外にも中島知久平海軍機関中尉と気球隊の兵員2名が乗船していました。試験飛行を進める中で、横安定板の増設やエンジンとプロペラを繋ぐ軸に故障が発生するなどの問題も見られました。

終焉

しかし、その後の老朽化により、会式イ号航空船は1914年3月に廃棄される運命を辿りました。初めての軍用飛行船として、多くの試験を経たこの航空機の歴史は、当時の航空技術の発展を物語るものとなっています。

諸元

• - 全長：48.34 m
• - 最大直径：11.45 m
• - 気嚢総容積：2,930 m³（ガス房容積：2,410 m³、空気房容積：540 m³）
• - 全備重量：3,220 kg
• - エンジン：ウーズレー 水冷直列4気筒（60 hp） × 1
• - 巡航速度：17.6 km/h
• - 航続時間：5時間
• - 武装：なし
• - 乗員：3 - 5名

参考文献

1. 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年、130,131頁。
2. 野沢正『日本航空機総集 VIII』出版協同社、1980年、148頁。
3. 佐山二郎『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』潮書房光人新社、2020年、101,104,105頁。

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