会津木綿

会津木綿（あいづもめん）

概要

会津木綿は、現在の福島県西部にあたる旧陸奥国会津郡に古くから伝承されてきた綿織物です。この地域特有の風土の中で育まれ、現在は福島県指定伝統工芸品としてその技術が継承されています。丈夫で実用性の高い織物として、かつては農作業などの野良着をはじめ、日常着として会津の人々の生活に欠かせないものでした。

特徴

この織物は、綿を素材とした平織りが基本です。目が詰まっていて非常に丈夫なため、長年の使用や頻繁な洗濯にもよく耐える堅牢さを持っています。元来は、藍染めの紺地に白い縞模様を織り出したシンプルなものが主流でしたが、時代とともに色彩は豊かになり、現在は赤、緑、黄色など、多彩な色糸を使ったバリエーション豊かな縞柄が織られています。

生地の質感は、厚みがありながらもふっくらとしており、独特の温かみを感じさせます。一般的な綿の平織物に比べて縮みにくいという特性があり、特別な手入れを必要とせず、自宅の洗濯機で気軽に洗えるという点も大きな魅力です。

製法

会津木綿の製織工程には、特徴的な工夫があります。特に経糸（たていと）の準備として、小麦澱粉を溶かした液に浸けて固く糊付けを行います。この糊付けされた経糸に緯糸（よこいと）を織り込んでいくことで、生地の表面に細かい節のような凹凸が生まれます。この独特の構造が、経糸と緯糸の間に空気の層を含みやすくする役割を果たしています。生地の中にたっぷりと空気を含むことができるため、汗などの水分をよく吸い込む吸湿性や、体温を逃がさず温かさを保つ保温性に優れています。この機能性から、会津木綿は四季を通じて快適に着用できる素材として評価されています。

歴史

会津地方における綿花栽培の歴史は古く、戦国時代の天正年間（1573～1592年）に、当時の領主であった蒲生氏郷が産業振興の一環として奨励したことに始まると伝えられています。

江戸時代の寛永4年（1627年）には、加藤嘉明が会津藩主となった際、以前の領地であった伊予国松山（現在の愛媛県）から熟練の織師を招き、高度な織物技術が会津にもたらされました。当時の伊予国は、瀬戸内海を通じた海外交易の影響を受け、異国情緒あふれる多彩な木綿の縞織物「伊予縞」を特産品としていました。この伊予縞の技術が導入されたことが、今日の会津木綿に見られる多様な縞模様の源流となったと考えられています。

さらに、寛永20年（1643年）には、三代藩主の保科正之が綿花栽培を積極的に奨励しました。藩士の妻女たちに対し、家計を助けるための内職として木綿の織物に取り組むよう勧め、生産を後押ししました。また、会津地方では古くから藍の栽培も盛んであり、農村部では農民の妻女たちが冬場の貴重な現金収入として、綿花の手紡ぎを行っていました。こうして、地域全体で綿の栽培と織物の生産が根付いていきました。

明治時代中頃になると、紡糸紡績業が発達し、糸の生産体制が変化します。それまで近隣の農家が手紡ぎした綿糸を利用していた体制から、国内の綿糸工場から大量に機械紡績された綿糸を仕入れるようになります。これに伴い、生産効率を高めるために力織機が導入され、会津木綿は大量生産の時代を迎えます。

明治時代末期から大正時代にかけて、会津木綿の生産は最盛期を迎え、全国に流通しました。しかし、昭和時代に入ると、生活様式の変化や安価な化学繊維の普及などにより、伝統的な木綿織物の需要は急速に減少。会津木綿の生産も大幅に縮小の一途をたどります。

現在、この伝統を受け継ぎ生産を続けているのは、福島県会津若松市の山田木綿織元とはらっぱ、そして会津坂下町のIIE Lab.（イーラボ）のわずか3軒の工場のみとなっています。厳しい状況ながらも、現代のニーズに合わせた新しい製品開発などを行いながら、会津が誇る伝統の技と風合いを守り続けています。

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