会津西街道

会津西街道：歴史と伝説が息づく古道

会津西街道は、江戸時代に会津藩主・保科正之によって整備された、会津若松から下野の今市（現在の栃木県日光市）に至る全長約130kmの街道です。会津側からは下野街道や南山通りとも呼ばれました。

概要

現在の福島県道131号下郷会津本郷線、国道121号に沿っており、江戸時代には会津藩だけでなく、新発田藩、村上藩、庄内藩、米沢藩といった諸藩の参勤交代や、江戸と会津以北を結ぶ重要な物流路として機能しました。

しかし、1884年（明治17年）に会津西街道に代わる新道、会津三方道路（現在の国道121号の前身）が整備されたことで、主要街道としての役割は徐々に衰退していきました。

史跡としての価値

街道筋にある大内宿は、往時の町並みや建造物が良好な状態で保存されており、1981年（昭和56年）に重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。また、氷玉峠から大内峠、大内宿、倉谷宿を経て国道121号にある楢原宿に至る経路には、石畳などの旧街道の跡が残されています。

特に下郷町域の旧街道は約22kmに及び、そのうち大内宿を中心とした約10kmは、当時の面影を色濃く残しています。この古道と、三郡境の塚、茶屋跡、一里塚、馬頭観世音碑などの関連遺跡は、2002年（平成14年）3月19日に下野街道として国の史跡に指定されました。

宿場

会津西街道には、以下の宿場が設けられていました。

若松城下 - 福永宿 - 関山宿 - 大内宿 - 倉谷宿 - 楢原宿 - 田島宿 - 川島宿 - 糸沢宿 - 横川宿 - 中三依宿 - 五十里宿 - 高原新田宿 - 藤原宿 - 大原宿 - 高徳宿 - 大桑宿 - 今市宿

今市宿からは、日光や江戸方面へと道が続いていました。

玉光堂の地蔵さまと腰掛けの松伝説

会津西街道沿いの泉現寺境内には、玉光堂子安地蔵尊が祀られています。この地蔵尊は、もともと極楽地蔵尊と呼ばれており、以下のような伝説が伝えられています。

江戸時代中期、ある殿様の一行がこの地で休憩した際、地蔵尊の裏にあった清水と、日陰を作る腰掛けの松に上機嫌でした。しかし、殿様が清水を飲もうとしたところ、茶碗にマツケムシが落下。怒った殿様は茶碗を投げ捨て、腰掛けの松を伐採してしまいました。

その後、殿様は城に着くと体調を崩し、病に倒れてしまいます。家来が陰陽師に祈祷を依頼したところ、玉光堂の地蔵尊が現れ、腰掛けの松を切った祟りであることが判明。殿様は自ら参詣し、地蔵尊に謝罪したところ、ようやく許しを得て快復したと伝えられています。その後、殿様は快気祝いとして家紋入りの鬼瓦を寄進し、それは今でも見ることができます。

会津中街道

1683年（天和3年）の日光大地震によって鬼怒川支流の男鹿川が土砂で堰き止められ、天然ダムである「五十里湖」が形成されました。これにより会津西街道が水没し通行不能となったため、会津藩3代藩主松平正容によって1695年（元禄8年）に代替街道として会津中街道が整備されました。しかし、会津西街道が再整備されると、会津中街道は次第に使われなくなっていきました。

五十里湖は、1723年（享保8年）の大雨で決壊し、死者1,200人を出す大災害を引き起こしました。

まとめ

会津西街道は、歴史的な宿場や石畳の道が残る貴重な街道です。街道沿いに残る伝説や史跡を巡りながら、いにしえの旅人気分を味わってみてはいかがでしょうか。

参考文献
会津の街道p17,p227-244
詳解会津若松城下絵図-p162,江戸街道37次(野口信一監修)
北会津の昔ばなしと伝説p183-185(北会津村教育委員会)
むかし話ー民話伝説集p107-109(歴史春秋社)
* 会津の歴史伝説(とっておきの50話)小島一男書p167-170(歴史春秋社)

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