会津騒動

会津騒動：藩主と家老の対立が招いた悲劇

会津騒動は、江戸時代前期、陸奥国会津藩（現在の福島県西部）で起こったお家騒動です。藩主・加藤明成の悪政と、それを諫めた家老・堀主水との対立が激化し、最終的には堀主水が処刑されるという悲劇的な結末を迎えました。

加藤明成の悪政

騒動の発端は、2代藩主・加藤明成の悪政にありました。父・加藤嘉明の死後、家督を継いだ明成は、私欲のために領民から過酷な年貢を取り立て、商人からも不正な運上金を徴収しました。その貪欲ぶりは、「一歩殿」と揶揄されるほどでした。領民や家臣からの不満は高まり、訴訟や紛争が絶えませんでした。

堀主水との対立

先代からの功臣であった堀主水は、明成の悪政を何度も諫めました。主水は、大坂の陣で敵を討ち取った際に堀に落ちたという逸話から、嘉明に「堀」の姓を許された人物で、戦国時代の気骨を強く残していました。しかし、明成は主水の諫言に耳を傾けず、次第に二人の関係は悪化していきました。

ある時、主水の家臣と明成の家臣が喧嘩を起こします。明成は、主水の家臣に非があるとして処罰し、さらに主水にも連座で蟄居を命じました。この処置に激怒した主水は、蟄居を破って明成に直訴しましたが、聞き入れられず、家老職を罷免されてしまいます。

堀主水の出奔と処刑

寛永16年（1639年）、ついに堀主水は一族郎党を率いて若松城を脱出します。その際、若松城に向かって鉄砲を撃ち、関所を押し破るという暴挙に出ました。その後、鎌倉を経て高野山に逃れましたが、明成の追及を受け、紀州藩を頼ります。しかし、紀州藩も明成の要求に応じざるを得ず、主水は江戸へ出て幕府に訴え出ます。

しかし、幕府は主水の行為を「家臣の礼を失ひ国家の法をみだる」と断じ、明成に引き渡しました。明成は、主水とその弟二人を処刑し、会津騒動は悲劇的な結末を迎えました。

加藤家の改易

寛永20年（1643年）、明成は病を理由に領地を返上したいと幕府に申し出ます。幕府は、加藤嘉明の功績を考慮し、明成に1万石を与えて家名再興を許しましたが、明成はこれを拒否。最終的に、明成の子・明友に石見吉永藩1万石を与え、加藤家は家名を再興することになりました。

騒動の真相

会津騒動については、『徳川実紀』に経緯が記されていますが、同時代の確実な史料は存在しません。そのため、騒動の真相については様々な説があります。明成の悪政が原因であったとする説が有力ですが、幕府による加藤家取り潰しを企図した陰謀説も存在します。

会津騒動が残したもの

会津騒動は、会津藩にとって大きな痛手となりました。藩主と家老の対立、家臣の出奔と処刑、そして藩の改易という一連の出来事は、藩の権威を大きく傷つけました。しかし、この騒動は、藩政のあり方を見直すきっかけとなり、後の会津藩の発展に繋がったとも言えます。

また、堀主水の悲劇的な最期は、多くの人々の心を打ちました。山田風太郎の小説『柳生忍法帖』では、堀主水の退転が物語の発端として描かれています。

会津騒動は、江戸時代前期の社会情勢や、藩政の抱える問題点を浮き彫りにした事件として、歴史に深く刻まれています。

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