伯方橋

伯方橋（はかたばし）

伯方橋は、本州四国連絡道路の一部として知られる西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」を構成する重要な橋梁の一つです。愛媛県今治市に位置し、伯方島と大島の間に浮かぶ見近島を結んでいます。地理的には、隣接する大島大橋と一体的な構造物として扱われることが多く、一般的には「伯方・大島大橋」として総称されています。

この橋の形式は、3つの連続した径間を持つ鋼箱桁橋が採用されています。道路としては、国道317号のバイパスとしての役割を担っています。

橋梁の構造と特徴

伯方橋は、中央径間が145メートル、その両側にそれぞれ90メートルの側径間を持つ構造で、橋長は326.8メートルです（概要での325メートルという数値もありますが、公式諸元に基づきます）。特筆すべきは、建設当時、鋼床板箱桁橋としては日本国内で最大の箱断面を有していたことです。設計は将来的な車線拡幅を視野に入れつつ、まずは暫定2車線での供用を前提に行われました。

供用開始時点では、車道床版の張り出しが箱桁の片側にのみ設けられていました。完成時の設計では、全幅員17.62メートル、うち道路幅員13メートル（車道9メートル、歩道・バイク道4メートル）となる構造です。現在も暫定2車線で運用されています。

建設時の技術的な挑戦

伯方橋の建設工事、特に中央径間の架設は、高度な技術を要する作業でした。両側の側径間は、桁を9つのブロックに分割し、仮受け台（ベント）と大型トラッククレーンを併用して組み立てるという手法がとられました。

一方、海峡部に位置する中央径間（145メートル）の桁は、当時日本最大クラスの浮体式起重機船、通称「フローティングクレーン」である「武蔵」（深田サルベージ建設所有）によって、桁全体を一度に吊り上げて架設するという画期的な工法が採用されました。しかし、架設地点である伯方瀬戸は比較的幅が狭く、巨大な「武蔵」が通常通り橋軸に対して直角に接近して桁を吊り上げるのは困難でした。

この課題を克服するため、建設チームは独創的な解決策を講じました。「武蔵」の左右のブームの傾斜角を調整し、吊り上げる桁の橋軸線とクレーン船の中心線との間に約71度という角度を持たせてクレーン船を配置したのです。これにより、クレーン船は狭い海峡に斜めから進入し、安全かつ効率的に中央径間の一括架設を成功させることができました。この斜め架設工法は、厳しい制約条件下での大型橋梁架設における画期的な事例として記憶されています。

橋梁の基本諸元と利用情報

伯方橋は、1988年（昭和63年）1月17日に開通し、供用を開始しました。正式な路線名は国道317号（西瀬戸自動車道）の一部であり、道路構造令上の区分では第1種3級に該当します。設計上の最高速度は時速80キロメートルですが、現在の規制速度は時速70キロメートルとなっています。施工は、東京鐵骨橋梁株式会社と日本鉄塔工業株式会社の共同企業体（JV）によって行われました。

しまなみ海道の特徴として、伯方橋にも自動車専用部の両側に、歩行者、自転車、そして排気量125cc以下の原動機付自転車が通行できる独立した専用道が併設されています。

利用にあたっては、気象条件、特に風による通行規制に注意が必要です。風速が秒速15メートル以上の場合は、歩行者道とバイク道が閉鎖されるほか、自動車専用部では二輪車（自動二輪車および原動機付自転車）が通行止めとなり、四輪車も時速50キロメートルに速度が制限されます。さらに風が強まり、風速が秒速25メートルに達した場合には、安全確保のため自動車専用部も含めて橋全体の通行が全面禁止となります。通行料金については、隣接する大島大橋と合わせて「伯方・大島大橋」として一括して設定されています。

伯方橋は、瀬戸内海の景観と調和しつつ、高度な土木技術によって実現された、しまなみ海道における重要な連絡路としての役割を果たしています。

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