似関船

似関船の概要と歴史

似関船（にたりぶね）は、江戸時代後期に登場した特殊な船で、通常の荷関船とは異なる特徴を持っています。この船は、商業目的の荷船である廻船（弁才船）の船体に、軍船に特有の総矢倉を備え、戦時には軍用、平時には商用として使われました。名前の由来は、これら二つの船の特性を融合させたものです。

1. 背景と建造の意義

類似船の建造背景には、寛政年間からの緊迫した日露関係があります。この時期、特にアダム・ラクスマンの来航により、江戸幕府は北方警備の必要性を認識しました。幕閣の松平定信は海防強化の指示を出し、蝦夷地での新たな船の建造を計画しました。この時、木材として中国船や西洋船の船体構造を取り入れる試みが行われましたが、実際には松平の失脚によりこの計画は影を潜めました。しかし、幕府はその後も蝦夷地への関与を進め、海防のための御用船を建造する政策へと発展しました。

2. 似関船の設計と特徴

似関船は、通常の弁才船と異なり、耐候性に優れ、過酷な海況での航行に適した構造を持っています。寛政年間に建造された神風丸や凌風丸は、商業用として非常に効率的に設計されていました。具体的には、通常の商船は水密構造が重視されるのに対し、似関船は装甲や武装を強化し、軍用としての性能も考慮されていました。特に、文化時代におけるロシアの侵略の影響を受けて、設計は急速に戦闘に対応したものとなりました。

3. 重装甲・重武装への進化

文化露寇を受けて、似関船はさらなる重装甲化と重武装化の必要が生じました。この方向性には、実戦に即応するための様々な提案が採用され、新たな船の設計が進められました。たとえば、航行時の防御力を高めるために、櫓を増設し、また矢倉を厚板で囲うなどの工夫が施されました。こうした改良により、似関船は500石積みの船体を持つ多様なタイプが建造され、戦時においても対応可能でした。

4. 増備とその消滅

文化5年には、幕府からの指示に応じて新たに10艘の御用船が建造されましたが、幕府の海防強化が進む中で、実戦に参加することなく消えてしまうことになりました。日露関係の緊張の緩和とともに似関船の存在意義が薄れ、最終的には商業取引の方針が変わると同時に、これらの船は払い下げられ、姿を消す道を辿ります。

結論

このように、似関船は江戸時代の歴史的背景を持ちながら、時代を超えた動的な役割を果たしました。商用と軍用を兼ね備えたその姿は、当時の日本における海防や交易の重要性を象徴するものでもあります。

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