但木土佐

但木土佐について

但木土佐（ただき とさ）は、幕末の動乱期において仙台藩の奉行として重要な役割を担った人物です。本名は成行（なりゆき）であり、土佐はその通称として用いられます。彼は古い家系に属し、その祖先は橘氏で、伊賀守重信にさかのぼります。この家系は長い歴史を有し、下野国足利郡但木に8000石を領する地位を持っていました。

家系の歴史

但木氏の系譜は、名門の伊達家初代である伊達朝宗に仕えていたという伝承もあるようです。特に、慶長から慶安年間にかけて奉行の職を務めた但木重久が有名ですが、その弟である惣右衛門久清の分家が土佐の家系を形成しました。重久から行久へと続く正統系統と、久清を主な祖とする新しい系統があり、後者は世臣としての地位を築いていきました。

土佐の後裔は、幕府から藩が与えた鷹狩場のある埼玉県久喜市鷲宮地区に移住し、現在も多くの子孫が生活しています。中には、検事総長を務めた但木敬一や、日野自動車の取締役なども存在します。また、甥の但木良次は奥羽日日新聞の創立者としても知られています。

経歴と政争

土佐は幕末の混乱期に奉行に選ばれ、藩政を統括し、軍事を総覧する立場にありました。彼は、前任の奉行である芝多民部の放漫経営を受け継ぎ、藩の財政を立て直すために倹約令を発布しました。文久2年（1862年）の段階で、表高62万石の仙台藩を、10万石の分限で運営することを宣言し、親政による緊縮財政を強行しました。さらに、殖産興業政策により経済の再建を試みました。

土佐は保守的な佐幕開国を主張し、重臣の三好清房と協力。尊攘派の重臣である遠藤允信とは対立し、内政上の政争が展開されました。政争の結果、土佐が勝利し、遠藤に対して閉門処分を下しました。その後の大政奉還に際しても、彼は仙台藩の軍勢を引き連れて上洛し、会議に参加しました。

戊辰戦争とその結果

戊辰戦争が勃発するや、文政の命令に従って会津藩討伐のため兵を動かしましたが、その後の行動は慎重でした。土佐は、会津藩との接触を通じて新政府への謝罪嘆願を行うよう説得を試みますが、最終的には会津藩の降伏を受け入れるに至ります。土佐は仙台藩の中での派閥争いの中、一時的な抗議として新政府の下参謀である世良修蔵を暗殺する許可を与え、多くの混乱を生じさせました。

降伏とその後

奥羽越列藩同盟が結成され、仙台藩と新政府の激しい交戦が続く中、土佐も主戦派の重鎮として活動しますが、内部の意見の不一致が大きな影響を与えました。最終的に、破れた戦局により仙台藩は降伏に至り、土佐は叛乱の責任を問われて新政府に引き渡され、東京で拘禁されます。1869年、彼は斬刑に処され、生涯を閉じることとなります。土佐は享年53歳であり、彼の最後の言葉「雲水の行衛は何処武蔵野を只吹く風にまかせたらなん」は後世に伝えられています。

逸話

但木土佐には、「人の話をよく聞き、深い寛容さを持つ人だった」との評判があります。彼が謹慎中に甥の良次と共に食事をしながら、「硯と紙を持って来い」と命じたというエピソードも残されており、芸術的な面を垣間見ることができます。このように土佐は、政治家でありながら文化的な素養も兼ね備えた人物だったと言えます。

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