伊達朝宗

伊達朝宗（だて ともむね）

伊達朝宗は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけての武将で、伊達氏の初代当主として知られています。その出自は、藤原山蔭流の藤原光隆の子とする説が有力ですが、異説も存在します。母は六条判官源為義の娘とされ、源頼朝との縁戚関係があったとされています。

生涯

朝宗は、保元元年（1156年）頃、下野国芳賀郡中村荘に居を構え、中村太郎と称しました。都では高松院の蔵人や判官代を務め、東宮の守護代官として活躍しました。地方官としては、遠江守、常陸介を歴任しています。承安元年（1171年）頃には官職を辞し、下野国中村に戻り、荘厳寺を再興しました。

治承4年（1180年）に源頼朝が挙兵すると、朝宗は母方の従兄弟という縁から、頼朝の麾下に馳せ参じました。文治5年（1189年）の奥州合戦では、4人の息子を率いて前衛として出陣し、信夫郡の石那坂の城砦を攻略、敵将の佐藤基治を生け捕りにする大手柄を立てました。この功績により、朝宗は激戦地であった陸奥国伊達郡を与えられ、これを機に伊達姓を名乗ったとされています。その後、伊達氏は朝宗の次男である宗村へと受け継がれ、中世から近世にかけて発展を遂げました。

また、朝宗の旧領である常陸国伊佐は長男の伊佐為宗が、下野国中村は三男の中村資綱がそれぞれ相続しました。資綱は後に陸奥国伊達郡梁川に移住し、その養子の朝定が後を継ぎました。

常陸入道念西と朝宗

『吾妻鏡』には、常陸入道念西が息子たちと共に奥州合戦で功を立て、伊達郡を与えられたと記されています。一般的に念西は朝宗、為重は後の2代当主・宗村であると考えられていますが、伊達氏の古い系譜や文書には、初代を宗村とするものも多く見られます。

新井白石は『藩鑑』において、朝宗の息子の宗村こそが念西であると見なしました。近年では、松浦丹次郎が『伊達氏誕生』で同様の見解を採り、3代当主・義広は次男・為重の息子であり、祖父・念西の養子になったとしています。また、宝賀寿男は、朝宗と宗村は同一人物であり、その系譜を『新編常陸国誌』を基に、伊佐実宗 - 中村秀宗 - 助宗 - 朝宗（念西）とし、山陰流の朝宗と念西と呼ばれた朝宗を別人とする説を唱えています。初期伊達氏の系譜には、いまだ解明されていない部分が多く残されています。

下野国中村荘園における朝宗

朝宗が築城したとされる中村城には、朝宗を祭神とする中村大明神が現在も存在しています。栃木県市町村誌によると、中村大明神は「中村左衛尉朝定死後、中村大明神と崇り祀り」とあり、朝宗の二男である朝定を祀る神社とされています。この朝定は、源義経の遺児である千歳丸（経若丸）との伝承があり、常陸坊海尊が藤原秀衡の命を受けて源義経の子を朝宗（念西）に託したとする伝承が残っています。中村大明神は、中村城落城後、最後の城主となった小太郎時長を祀る小太郎明神として伝えられ、現在では遍照寺の境内に移築されています。

中村城とカヤの木

朝宗が築いたとされる中村城には、伊達騒動を題材にしたNHK大河ドラマ「樅ノ木は残った」のモデルになったカヤの古木があります。この古木は現在、遍照寺の境内にあり、栃木県指定天然記念物となっています。伝承によると、文治5年（1189年）に朝宗が奥州合戦の恩賞として伊達郡・信夫郡へ赴く際に植樹したとされています。

系譜

父：中村光隆 - 待賢門院非蔵人藤原光隆
母：六条判官源為義の女
弟：業盛
室：結城氏
次男：伊達宗村（1173年?-1251年?） - 殖野為重、伊達氏2代当主
室：不詳
長男：伊佐為宗（?-1221年）
三男：中村資綱
四男：伊達為家 - 駿河伊達氏の祖
五男：為行
六男：田手実綱
七男：延厳（僧）
八男：朝基
九男：寺本為保
女子：大進局 - 源頼朝室
養子
男子：中村朝定

関連作品

政宗ダテニクル（声：森川智之） - 福島県伊達市のご当地アニメ。道の駅伊達の郷りょうぜんに等身大キャラクターの伊達朝宗像が展示されています。

関連項目

常陸入道念西
常陸伊佐氏
* 中村氏 (下野国)

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