住ノ江検車区

南海電気鉄道が運営する住ノ江検車区（すみのえけんしゃく）は、大阪府大阪市住之江区に位置する極めて重要な車両基地です。南海本線における主要な拠点の一つとして機能しており、その敷地は住ノ江駅のすぐ近くに隣接しています。この車両基地の特筆すべき点は、その全体が高架構造で構築されていることです。

住ノ江検車区の起源は古く、大正時代にさかのぼります。具体的には、1921年（大正10年）2月に「住ノ江電車庫」として、まずは地上施設として設立されました。その後、南海本線の大阪市内区間で実施された大規模な連続立体交差化工事の一環として、この電車庫も高架化される計画が進められました。1972年（昭和47年）11月に着工された高架化工事においては、当初、他の場所への移転案も検討されましたが、最終的には現在地での高架化が決定され、工事が進められました。そして、1980年（昭和55年）5月に全ての高架化工事が完了しました。この高架化は、単なる構造の変更にとどまらず、車両の収容能力を飛躍的に向上させました。高架化される前の収容両数が約100両であったのに対し、高架化後は150両を収容できるようになりました。

歴史の中では、電車だけでなく気動車のメンテナンスも手掛けていた時期があります。1965年（昭和40年）には、当時の南海電鉄が所有していたキハ5501形やキハ5551形といった気動車の検査・整備を行うための専門施設として、気動車検査場が設置されました。しかし、南海電鉄から気動車が全廃されたことに伴い、この気動車検査場は1985年（昭和60年）にその役割を終え、廃止されました。現在、かつて気動車検査場があった区画は、主に線路の保守作業に使用される保線車両の基地として活用されています。

組織体制においても、近年いくつかの変遷がありました。2005年には、南海電鉄全体での車両基地の機能再編が行われ、当時独立していた羽倉崎検車区、そしてその配下にあった和歌山検車支区および伊太祁曽検車支区が、住ノ江検車区の下に統合され、それぞれが住ノ江検車区の支区となりました。しかし、この組織再編は一時的なものでした。翌2006年には、貴志川線が和歌山電鐵に経営移管されたことに伴い、伊太祁曽検車支区も和歌山電鐵へと移管され、現在は同社の「伊太祈曽車両基地」となっています。また、和歌山検車支区も、2009年には住ノ江検車区の「和歌山出張場」という位置づけに変更されました。

現在、住ノ江検車区には、南海本線を中心に運用される多岐にわたる形式の車両が配置されています。関西国際空港連絡特急として知られる50000系「ラピート」をはじめ、特急「サザン」に使用される10000系や12000系といった特急形車両が重要な位置を占めています。通勤形車両では、近年導入が進められている8300系や、その前世代にあたる8000系、さらには9000系、1000系、3000系などが所属しています。また、一部の支線区間で活躍する車両も配置されており、2000系や、高師浜線や高野線（汐見橋線）でワンマン運転に対応した2200系・2230系などもこの基地で管理されています。ただし、全ての車両が住ノ江検車区のみの管轄というわけではなく、例えば7000系・7100系のうち加太線や多奈川線でのワンマン運用に対応する車両などは、和歌山検車区といった他の車両基地の管轄下に置かれている場合もあります。このように、住ノ江検車区は、南海電鉄の主要な車両群を収容し、日々の点検・整備を行う上で中核的な役割を担っています。

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