住友別子鉱山鉄道1形蒸気機関車

1形タンク式蒸気機関車の概要

1形タンク式蒸気機関車は、住友別子鉱山鉄道で使用された機関車であり、1892年にドイツのクラウス社で製造されました。軌間762mmで、車軸配置は0-4-0(B)という構造を持ち、運転整備重量は約10トンです。この機関車は2気筒単式の飽和式ウェルタンク機関車で、特にそのデザインと機能性が注目されます。

製造と輸入経過

日本に輸入されたのは1892年から1901年までの9年間で、合計10両が輸入されました。製造時の系列番号は27で、クラウス社による同系機関車は世界中に717両存在しましたが、日本に輸入されたのはこの10両のみでした。具体的な製造年や番号は以下の通りです。

• - 1892年（4両）：1 - 4（系列番号 27ii、製造番号 2679 - 2682）
• - 1894年（2両）：5, 6（系列番号 27ss、製造番号 3073, 3074）
• - 1896年（1両）：7（系列番号 27yy、製造番号 3399）
• - 1898年（2両）：8, 9（系列番号 27zg、製造番号 3923, 3924）
• - 1901年（1両）：10（系列番号 27zq、製造番号 4394）

この期間中に機関車が増備されたため、各ロットによってサイドタンクの形状や運転室の後部デザインに異なる特徴が見られます。具体的には、5両目以降は前方に水槽を設けており、これに対して1 - 4は左が炭庫、右が道具箱という構造になっていました。また、煙突の形状も当初はダイヤモンド形でしたが、後にパイプ形に改められるなど、いくつかの改良が施されています。

主要諸元

この機関車の主要な技術的仕様は次の通りです。全長は5,093mm（連結器交換後）で、当初は4,850mmとされています。全高は2,681mm、最大幅1,905mm、軌間762mmという規格のもとで設計されました。また、シリンダーサイズは225mm×300mm、ボイラー圧力は12.0kg/cm²となっています。

具体的なデータを示すと、機関車の性能は次のようになります。

• - シリンダー引張力（0.85P）：2,280kg
• - 動輪周馬力：50PS
• - ブレーキ方式：手ブレーキ、反圧ブレーキ

譲渡と廃車

輸入された10両のうち、5 - 7号機は1912年に廃車され、その後伊予鉄道に譲渡されました。譲渡後、甲6形（初代）15 - 17として使用されましたが、早々に経年劣化により1917年にはスクラップとして売却されることとなります。一方、16号機は佐世保軽便鉄道で3号として使われ、最終的には国有化に伴って1948年に廃車されました。

保存状態と現存機

1号機は現在、愛媛県新居浜市の別子銅山記念館で静態保存されており、1963年には準鉄道記念物に指定されています。このように、1形タンク式蒸気機関車は日本の鉄道史において重要な位置を占めており、製造から130年以上経った今でも多くの人々に親しまれています。

まとめ

1形タンク式蒸気機関車は、別子鉱山における歴史的な存在であり、今なお多くの鉄道ファンに支持されています。その独特のデザインや技術は、当時の技術力を物語るものであり、保存状態の良い1号機は多くの人々にその魅力を伝えています。

もう一度検索