ウェルタンク

ウェルタンク（Well Tank）

ウェルタンクは蒸気機関車における水タンクの設置方式の一つであり、主に主台枠の空間を有効に活用するシステムです。この設計は、薄い鋼板を使った箱状の構造を基本としており、台枠には横梁が組み込まれ、底板や仕切り板が追加されています。このことにより、通常は空いたままになっている台枠内部のスペースを水タンクとして利用することが可能となります。

給水方法

給水方法は主に2つに分類され、ボイラへの水の注入はウェルタンクの最下部から行われ、インジェクタやポンプが使用されます。具体的には、以下のような2つのタイプが存在します。

1. 給水口をボイラ脇の台枠上に設置したタイプ（例：伊豫鉄道甲1形）
2. 給水口を前面の台枠端梁（連結器の上）に突き出したタイプ（例：西大寺鉄道1形）

製造と設計

ウェルタンクの設計においては、台枠各部の接合が強固に行われることが求められます。これにより水密性が確保されるだけでなく、結果として台枠の強度の向上や低重心化も図れます。また、水タンクスペースが確保されることで、燃料庫の容積を増設することができ、容積の大きい低質燃料の使用も可能になります。

水タンクの容積は台枠容積に制限されているため、サイドタンクと併用する「サイド・ウェルタンク」という形式も存在し、特にタンク機関車においては車体サイズを保持しつつ水タンク容積を増やすための効果的な手法となっています。

通常、水タンクの設置位置は動輪間に配置されますが、前方のシリンダーブロック間などに設けられることもあります。

歴史と影響

このウェルタンク方式は、ドイツの技術者ゲオルク・クラウスによって考案されました。彼はスイス北東鉄道において主任を務めた後、ドイツ・ミュンヘンでクラウス社を設立し、1867年に超小型機関車として「Landwührden」を完成させました。この機関車は特に軍用軽便鉄道向けに設計され、軸配置B（0-4-0）やC（0-6-0）の小型蒸気機関車において大きな成功を収めました。

クラウス社のウェルタンク技術は、多くの欧州の機関車メーカー、また日本の機関車メーカーに取り入れられました。実際、日本に輸入されたクラウス社製蒸気機関車の多くには、この設計が採用されています。最初の輸入例である伊豫鉄道甲1形から下津井軽便鉄道11形まで、ほぼ全車両に見られるように、ウェルタンクは日本の軽便鉄道向けタンク機関車の事実上の標準として位置づけられています。

和製英語と国際用語

なお、日本では一般に「ボトムタンク」や「ボットムタンク」といった用語が使われていますが、これは和製英語であり英語圏では通用しません。一方、オリジナルのドイツ語では「Wasserkastenrahmen（水タンク台枠）」という名称が使われています。

関連項目

• - インテグラルタンク

モノコック構造の航空機において、構造材に囲まれた空間を燃料タンクに利用する方式です。

ウェルタンクはその特性により、蒸気機関車の効率性と機能性を高める重要な設計であり、今日まで広く利用されています。

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