住吉台 (大津市)

住吉台：地図混乱問題を抱える住宅地の詳細

住吉台は、滋賀県大津市和邇北浜に位置する住宅地区です。和邇駅から北西に約1km、真光寺川、喜撰川、湖西線に囲まれた場所にあります。この地域は市街化調整区域ですが、旧志賀町による「認定団地制度」のため、自己居住用住宅の建築が許可されました。

歴史と概要

1960年代に約12.6ヘクタール、23街区に352区画が造成され、現在では500人を超える人々が生活しています。1970年代には別荘地としても販売されました。しかし、この地区は法務局に保管されている地図と実際の土地の形状が大きく異なる「地図混乱問題」を抱えています。この問題により、土地や道路の権利関係が確定されないまま、行政による社会基盤整備が進んでいません。

地図混乱問題の発生

住吉台はもともと山の斜面で、1960年代に宅地造成業者が買収し開発しました。業者は中心部の農地の宅地転用が困難だったため、近くの別の地番を貼り付け、法務局の地図を無視した測量図を作成しました。当時の法務局も登記申請の多さから現地確認を怠り、約12万㎡にわたる地図混乱を引き起こしました。

具体的な問題として、「地権者不明の土地」、「所在地不明の地番」、「複数の地番が重なり合う土地」などが存在します。明治時代に作成された地図が訂正されず、現状と大きく異なることが混乱を招いています。1992年には宅地造成主が死亡し、土地が競売にかけられたことで問題が表面化。住民は土地所有権がない「占有状態」であると指摘され、境界紛争など多くの民事裁判が提起されました。

1995年以降、法務局が実態調査を開始しましたが、登記は存在するが実際の土地がない「幽霊土地」が41件も確認され、正確な地図作成には至っていません。

住環境の現状

社会基盤整備の遅れ

上水道は普及していますが、下水道は一部のみ整備された状態です。多くの住民は単独処理浄化槽や浸透枡を利用しており、生活排水が事実上琵琶湖に垂れ流しになっている状況です。また、悪質な業者が道路を封鎖するトラブルも発生しており、宅地内の生活道路は市道として認定されておらず、私道として扱われています。そのため、道路の陥没や下水管の漏水などが発生した場合、復旧費用は住民負担となっています。

自然災害に対する脆弱性

2008年以降、老朽化した下水道管の漏水により道路陥没が多発しました。住民が応急処置を施していますが、本格的な下水道整備は進んでいません。2010年には豪雨により土砂崩れが発生し、住宅の基礎部分が崩れるなど、住民は不便な生活を強いられています。復旧工事には、複数の地権者の同意が必要であるため、対応が遅れることもあります。

問題解決に向けた動き

2004年に法務局が地図作成の基準点を設置し、2009年には法務省も問題の深刻さを認識しました。大津地方法務局に対策室が設置され、土地所有者の見解確認、道路測量、地図作成範囲の特定などの作業が行われています。住民向けの説明会も開催され、地図作成のための道路測量が開始されました。

大津市議会では問題解決を求める請願が採択され、大津市長が法務大臣に陳情するなど、行政も解決に向けて動いています。また、大津市は「地図混乱専門の対策室」を設置し、過去の登記記録の収集や住民相談に対応しています。

地域活動と住民の取り組み

住吉台の自治会は土地問題特別委員会を設置し、情報発信や測量の見直し、専門家との連携、道路問題基金の設立などに取り組んでいます。また、私道の修繕や漏水対応も自治会が中心となって行っています。

住吉台地番整理協議会

地区の地権者から基金出資を受けて設立された団体で、地区住民の約4分の3が加入しています。国会議員、大津地方法務局、大津市などに問題解決を訴える活動を行っており、地区内の私道を大津市に無償寄付する方針を掲げています。

その他の情報

住吉神社

1010年に清仁親王が時化に遭った際、住吉大神に加護を祈り、漁師に助けられた縁で創建されたとされる神社です。2010年には創建千年を迎え、本殿の改修も行われました。地元住民は日吉大社摂社三宮神社を氏神とする一方で、当社も氏神同様に敬っています。

住吉台は、複雑な歴史と深刻な問題を抱えながらも、住民が協力して問題解決に取り組んでいる地域です。

もう一度検索