住吉大社神代記

住吉大社神代記

『住吉大社神代記』（すみよしたいしゃじんだいき）は、住吉大社に関する由来や歴史を記録した貴重な古典文献です。本書は全1巻からなり、719行にわたり、その内容は住吉大社の祭神である住吉三神についての情報を中心に構成されています。特に「住吉大神顕現次第」において、住吉三神の鎮座や神域、神宝、眷属神について詳細に述べられています。また、大社の各地域についても言及されており、地理的な情報が豊富に盛り込まれています。これは古代史研究において非常に重要な資料とされています。

本書は、公益財団法人住吉名勝保存会が管理する住吉大社文華館に所蔵されており、国の重要文化財としても認定されています。『神代記』という名称の初出は、藤原定家の著作『明月記』に見ることができます。定家は住吉大社と四天王寺の間で発生した領地問題において、住吉大社側が証拠資料として本書を提出したことに言及しています。これにより、『神代記』は歴史的な文献として名を馳せたのです。

元々、神代記は社内で秘蔵されていたため、著作といえる最高の権威を誇るものでした。社家の人々でさえも、拝観することが許されなかったのですが、明治時代に入ると学界の注目を集め、わずかに拝観が許されるようになりました。1907年には佐伯有義の手によって「住吉大社神代記事」として刊行され、これにより原書が広く知られるようになりました。さらに、1936年には宮地直一が原寸大の写真複製本を出版し、その後の研究者たちによって本書に関する研究が深まることに繋がりました。

特に、田中卓は『住吉大社神代記』の研究を行い、1951年には彼の著書として本書に特化した研究書を発表しました。彼の提唱によって、本書の名は定着し、現在でも広く受け入れられています。1954年には重要文化財として正式に指定され、以降も多くの研究が行われています。

本書の成立は、天平3年（731年）の7月3日に遡り、神主の津守宿禰嶋麻呂と津守宿禰客人の二名によって撰者の名が記されています。ただし、成立時期については様々な論争があり、特に訓点が使用されていることから、その成立は10世紀以前に遡ることはないとされているのが一般的です。

内容に関しては、巻頭には「合す」という言葉の後に、「従三位住吉大明神大社神代記」や「住吉現神大神顕座神縁記」といった二つの文献名が記載されています。これにより、これら二つの文献が一つにまとめられたものと考えられていますが、具体的にどの部分がどの文献に属するのかは明らかではありません。

住吉三神の由来についての部分は約6割を占めており、多くは『日本書紀』からの引用が基盤となっています。しかし、引用された文がそのまま用いられているわけではなく、改変や独自の伝承が挿入されていることが見受けられ、その独特の視点が反映されています。たとえば、神代の部分では『日本書紀』の神話とは異なり、『古事記』に類似した神話が含まれている点が特徴的です。

仲哀天皇に関する記述では、その父が天皇と呼ばれ、成務天皇が彼の祖父として引用されていますが、これも『記紀』の記述とは異なる点が見受けられます。特に有名なのは、神功皇后と住吉大神との関係に関する伝承であり、彼らの密接な関係が示唆されています。

このように、『住吉大社神代記』は、住吉大社の歴史や信仰体系に関する重要な情報源として位置づけられ、今なお多くの研究者によって探求の対象となっています。その文化的、歴史的意義は計り知れず、今後もその研究は続けられることでしょう。

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