田中卓

田中卓（たなか たかし）

日本の歴史学者であり、皇學館大学の名誉教授。専門は日本古代史。

生涯

1923年（大正12年）12月12日に大阪府で生まれ、2018年（平成30年）11月24日に慢性腎不全のため94歳で亡くなりました。東京帝国大学文学部国史学科を卒業後、大阪府立図書館や大阪府立阿部野高等学校で勤務。その後、大阪社会事業短期大学（現：大阪府立大学社会福祉学部）で教鞭をとり、1962年に皇學館大學が開学すると同時に教授に就任しました。皇學館大學では、文学部長、学長を歴任し、1994年に名誉教授となりました。皇學館大學の学事顧問も務めました。

学問的業績

平泉澄の弟子として、日本古代史、特に上代史を専門とし、実証的な研究を積み重ねました。また、戦後の歴史学界で唯物史観が主流となる中、独自の視点から歴史研究に取り組みました。処女論文である「新撰姓氏録撰述の次第」は、国文学系の雑誌に掲載されるなど、発表の場に苦労した時期もありました。

続日本紀研究会を井上薫、岸俊男、直木孝次郎とともに結成し、古代史研究の発展に貢献しました。多くの論文や著書を執筆し、『田中卓著作集』として刊行されています。

政治・教育への関与

専門の古代史研究に加えて、政治問題や教育問題にも積極的に関与しました。特に、「建国記念日」制定問題や教育問題においては、独自の主張を展開しました。日本教師会を結成して会長を務め、日本教職員組合中心の教育界に異を唱えました。

また、皇室典範改正問題では、女性天皇・女系天皇容認の立場を取り、保守派や右翼からの批判を受けました。しかし、自身の信念に基づき、様々な意見を表明し続けました。

人物像

田中卓は、歴史学者としてだけでなく、教育者、思想家としても活躍しました。その研究活動は多岐にわたり、古代史研究にとどまらず、政治、教育、皇室問題など、幅広い分野に影響を与えました。また、その活動は、戦後の日本の歴史観や教育に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

主な著書

『住吉大社神代記』
『神宮の創祀と発展』
『愛国心の目覚め』
『住吉大社史（上巻・中巻）』
『祖国を見直そう』
『最新日本史』
『祖国は呼びかける』
『日本古典の研究』
『日本国家成立の研究』
『海に書かれた邪馬台国』
『古代天皇の秘密』
『皇国史観の対決』
『伊勢神宮と式年遷宮』
『歴史と伝統　この大学を見よ』
『愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか』
『田中卓著作集』（全12巻）
『続 田中卓著作集』（全6巻）
『田中卓評論集』全4冊

略年譜

1923年：大阪府に生まれる
1945年：東京帝国大学文学部国史学科卒業
1960年：國學院大學より文学博士の学位を取得
1962年：皇學館大學教授に就任
1980年：皇學館大學学長に就任
1994年：皇學館大學名誉教授となる
2018年：慢性腎不全のため死去

その他の活動

1950年：藝林會委員
1954年：続日本紀研究会結成
1957年：日本上古史研究会発足
1963年：日本教師会結成、会長に就任
1974年：式内社研究会結成、理事長に就任

参考文献

渡辺寛「田中先生の御退任にあたって」 『皇學館史學』7・8（合併号）1993年3月
渡辺寛「田中先生の略歴と著述（歴史関係）」 『皇學館史學』7・8（合併号） 1993年3月
* 「田中卓名誉教授略歴及び研究業績」 『皇學館大学紀要』33 1995年1月

田中卓は、日本の歴史学界に大きな足跡を残した学者の一人であり、その業績は後世に語り継がれるでしょう。

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