住吉橋 (広島市)

住吉橋：太田川に架かる歴史と技術の橋

広島県広島市中区を流れる旧太田川（本川）に架かる住吉橋は、単なる橋梁を超えた存在感を放っています。その歴史は古く、明治時代に木橋として架設されたのが始まりです。東詰上流側にある住吉神社にちなんで名付けられ、神社を思わせる朱色の塗装が施されているのも特徴的です。

住吉橋の最大の特徴は、日本で初めて施工された鋼ローゼ橋である点です。この技術的な先進性は、橋梁史において重要な位置付けを与えています。現在の橋は、戦後の再建時に、国内の専門業者による設計を経て完成しました。当初は国道2号筋の主要な橋でしたが、上流側に新住吉橋が架設された後も、地域住民の生活道路として重要な役割を担い続けています。

橋の諸元は次のとおりです。

路線名：市道中2区42号線
橋長：137.5m
支間長：33.3m + 70.0m + 33.3m
幅員：7.5m（7.1m）
上部工：下路式カンチレバーローゼ橋
下部工：RC橋台2基、RCラーメン橋脚2基
* 基礎工：橋台 - 杭基礎、橋脚 - ニューマチックケーソン基礎

住吉橋は、その歴史の中で幾多の困難を経験しました。藩政時代には、城下における架橋規制により、この川には本川橋しか架かっていませんでした。明治時代になって規制が解かれ、ようやく住民の要望に応える形で木橋が架設されました。しかし、度重なる水害により落橋を繰り返し、鉄筋コンクリート桁橋への架け替えを経て、現在の鋼ローゼ橋へと進化を遂げています。

特に、1945年（昭和20年）の原爆投下は、住吉橋にも大きな被害をもたらしました。爆心地から1.39kmという近距離に位置したため、桁がわずかにずれ、高欄が落下する被害を受けましたが、落橋は免れました。この時、橋の袂には臨時の救護所が設けられ、多くの被爆者が一時的に収容され、舟を使って宇品や似島へ搬送されました。また、戦後まもなく襲来した台風にも度々被害を受け、仮設橋を架け直すなど、幾度となく再建を繰り返すことになります。

住吉橋の東詰には、地元住民によって建てられた「住吉橋記念燈」があります。常夜燈をモチーフにしたこの記念燈は、橋の歴史と地域住民の想いを象徴する存在です。高潮対策事業で一時撤去されましたが、後に元の位置に戻されました。現在も、この地を見守り続けています。

アクアネット広島が運行する河川遊覧船「ひろしま世界遺産航路」は、住吉橋の下を通過します。遊覧船から眺める住吉橋は、また違った趣があり、歴史と技術が織りなす美しい景観を堪能できるでしょう。

住吉橋は、単なる交通手段という枠を超え、広島の歴史と技術、そして人々の生活を繋ぐ重要な役割を担っていると言えるでしょう。その存在は、これからも広島の街を見守り続けることでしょう。

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