佐々木八郎

佐々木八郎の業績と生涯

佐々木八郎（ささき はちろう、1898年9月10日 - 1980年9月8日）は、日本の国文学の分野で特に中世文学に豊かな貢献をした著名な学者です。彼は、特に『平家物語』の研究を通じて、その業績が広く認識されています。新潟県に生まれた八郎は、1919年に早稲田大学高等師範部の国語漢文学科を卒業しました。大学在学中には、五十嵐力の指導の下で『平家物語』に対する深い関心を抱くこととなり、その後の研究活動に影響を与えました。

教職に従事した八郎は、和歌山県立和歌山中学校や早稲田中学校で教鞭を執った後、1929年に早稲田大学高等師範部の教授に就任しました。教授時代には、『平家物語』を授業の中で取り上げ、多様な諸本の比較検討を行うことに注力しました。この研究においては、松井簡治や高野辰之といった他の研究者が所蔵するさまざまな諸本を実際に検討し、吟味を重ねました。その結果として、1938年に出版された『平家物語講説』は、学界で非常に高い評価を受けることになりました。

加えて、佐々木は謡曲の稽古にも力を入れ、その実践的な経験に基づいた研究も手掛けました。彼は演者としての視点を持ち、芸道や語り物に関する知見を深め、その成果を学問としてまとめました。

戦後の1948年には、彼の大著『平家物語の研究（上・中・下）』が刊行され、これにより早稲田大学から文学博士の称号を授与されました。この出版物は、彼の研究の集大成として位置づけられています。また、早稲田大学の教育学部創設に関わり、校内では教育学部長や常任理事、図書館長などの重要な役職を歴任しました。

さらに、佐々木は大学外でも積極的に活動し、大学設置基準協会の副会長や国語審議会の委員などとしてもその知見を活かし続けました。1969年には早稲田大学を定年退職し、その後は名誉教授となりました。

主要な著作

1. 『平家物語講説』 - 三省堂、1938年（増訂版：早稲田大学出版部、1950年）
2. 『日野資朝卿』 - 冨山房、1940年
3. 『芸道の構成』 - 冨山房、1942年（後に改題『芸能』『芸道』の第三版、第四版）
4. 『中世戦記文学』 - 鶴書房、1943年
5. 『語り物の系譜』 - 講談社、1947年（増補版：笠間書院、1977年）
6. 『平家物語の研究（上・中・下）』 - 早稲田大学出版部、1948年（増補版：1967年）
7. 『平家物語評講（上・下）』 - 明治書院、1963年
8. 『徒然草の味わい方』 - 明治書院、1973年
9. 『平家物語の達成』 - 明治書院、1974年
10. 『中世文学の構想』 - 明治書院、1984年

佐々木八郎の研究と教育に対する情熱は、彼の著書や後の学問に多大な影響を与え、日本文学の発展に寄与したと言えるでしょう。

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